「リーダー」と「リーダーシップ」

日本では、昔から「船頭多くして、船、山に登る」という諺があります。リーダーは一人、それ以外の人はフォロワーシップすら必要ではなく、黙ってついておいで、という形が多かったように思います。この場合のリーダーは、すべてを考え、方向性を決め、みんなに説明し、すべての責任を持たなくてはなりません。こりゃ大変だわ、おまけにすごいストレスだわ、、、

自分の意見を言うだけ言って、自分の意見と違う意見を言われると自分が否定されたような気になってムキになり、そして、プロジェクトの進捗が膠着状態になってしまう。その結果、本来、海に進水すべき船は、気が付くと山に登ってしまう。

しかし、リーダーシップを持った人の集まりなら、たとえ100人集まったとしても「さっさと船は海に進水する」のです。この場合のリーダーシップは、目的(あるいはミッション)を理解し、その目的を達成するために全力でコミットする、という姿勢にほかならないからです。そのためには、別の視点からの意見があった時にはきちんと意見を言えるフォロワーシップ、反対意見を述べる時の建設的な姿勢、自分よりも適切だと思われる意見が出た時は、プロジェクト全体のことを考えてそちらを支持できる寛容さ(そして、自分が否定されたのではないのだ、という区別がきちんとできる姿勢)などが必要とされます。

ですから私は、全ての人にリーダーシップは必要である、と強く信じています。そして、すべての人の中に、リーダーシップの芽はちゃんとあるのだが、日本ではちょっとした行動を捉えて「今のがリーダーシップある態度だよね」という教育が、家庭でも学校でも殆どなされないので、自分が取っている行動がリーダーシップのある態度なのか、そうではないのか学ぶ機会がないまま大人になります。

いろいろな定義がありますが、私は上記のことから、フォロワーシップもリーダーシップの中の一つ、と考えています。すなわち、リーダーシップがある人は、きちんとしたフォロワーシップも持ち合わせている。まさに「リーダーシップとフォロワーシップは表裏」です。

もう一つ、重要な事は、リーダーシップとリーダーの違いです。リーダーは単にポジションの名前であり、リーダーシップは物事に対する姿勢です。従って、「リーダーシップがないリーダー」というのもたくさんいるし「リーダーではないけれども、リーダーシップがある人」ということもたくさんあります。なんの裁量権もないけれども、人を巻き込んで問題を解決し、現状を少しずつ良くしていく人というのはいっぱいいます。プロジェクトの大小は関係ありません。

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この記事を書いた人

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本間 季里

産業医、伝え方コーチ、ストレングス・コーチ

大学卒業後、小児科医・免疫学の基礎研究者を経て、2017年より、世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかで、それでも妥協点を見つけて協調していくための伝え方を提案し、個人と組織の両方にアプローチできる産業医・伝え方コーチとして活動中。

セッション数は7年間でのべ3000回以上、これまで300名を超える方々に伝え方の講座や研修を提供し、満足度が90%以上です。

資格:医師・医学博士・日本医師会認定産業医
NPO法人アサーティブジャパン会員トレーナー

Gallup認定ストレングス・コーチ

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