雛人形

今年も雛人形を飾る時期になりました。テレビを見ても、雛人形のCMが流れています。

十数年ほど前、母がわざわざ新しく雛人形を買い求め、いい年をした中年の娘(私)に送ってきたことがありました。私は雛人形を別段ほしいとも思っておらず、また、当時のワンルームマンションでは飾るところもありませんでした。なぜ急にこんなものを送ってきたのかと、鬱陶しさすら感じました。

送ってきた年は仕方がないので飾りましたが、飾り付けだけで一人でへとへとになり、人形の存在が疎ましく感じられました。翌年から数年は、節分が過ぎると気持ちが憂鬱になりました。あの雛人形を飾らなくてはならない、でもあんな疲れる思いをしてまで飾りたくない、そういう葛藤を私に引き起こす雛人形が重苦しく感じました。

二度目に飾ったのは、友人の家に友人と一緒に人形を運び、友人と飾り付けて、女友達を呼んで食事会をした時でした。私の友人たちは雛人形を楽しんでくれました。それきり、また数年、飾られることもなく人形は箱のなかにしまわれたままになりました。

それから数年、今から5年前に父が急に体調を崩したので、両親と同居して介護生活が始まりました。自分の中では距離をおいていた両親とも向き合わざるを得なくなり、良くも悪くも私と両親の関係は変化しました。幸い、父はゆっくりと薄皮を剥ぐように回復しました。そして2年後に私達親子は同居を解消することができました。

その年のお正月明けに、私は軽やかな気持ちで、久しぶりに雛人形を出そうと思いたちました。一人で力仕事なのは変わらないはずなのに、人形を疎ましく感じることもなく、丁寧に一つ一つ飾り終えました。父の病気を通じて母との関係に変化が起こり、それまで重苦しく感じていた雛人形が、その時はただの綺麗な雛人形に変化していました。

過去は変えられる。事実は同じでも、その解釈が変われば過去は変えられる、とその時に思いました。

 

 

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この記事を書いた人

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本間 季里

産業医、伝え方コーチ、ストレングス・コーチ

大学卒業後、小児科医・免疫学の基礎研究者を経て、2017年より、世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかで、それでも妥協点を見つけて協調していくための伝え方を提案し、個人と組織の両方にアプローチできる産業医・伝え方コーチとして活動中。

セッション数は7年間でのべ3000回以上、これまで300名を超える方々に伝え方の講座や研修を提供し、満足度が90%以上です。

資格:医師・医学博士・日本医師会認定産業医
NPO法人アサーティブジャパン会員トレーナー

Gallup認定ストレングス・コーチ

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