昔、スーパーマーケットで見かけた光景です。
「これは家にあるでしょ。同じものを何個も買ってどうするの」50代くらいの息子さんが、70代後半に見えるお母さんを叱っていました。
お母さんは言い返すこともなく、恥ずかしそうに笑って黙っていました。
家電量販店でも、似た場面に出会いました。40代くらいの女性が、高齢のご両親に向かって作り笑いのまま、立て続けに説明している。ご両親は下を向いて微笑みながら、その言葉をやり過ごしていました。
見ていて、胸がぎゅっとなりました。
あの息子さんの怒りの奥にあったのは、たぶん怒りではありません。老いていく母親への不安。大切な人が少しずつ変わっていくことを認めなければならない、切なさ。悲しさ。
怒りは、多くの場合、自分の気持ちを守るための反応なのだと私は考えています。不安や悲しみや恐れと正面から向き合うのはつらい。だから無意識に、怒りという形に変えてしまう。
たとえば、家族が連絡もなく夜遅くまで帰ってこない。時間が経つほどに、良くないことばかりが頭に浮かぶ。そこへ、能天気に帰宅した家族の顔を見た瞬間、怒りが爆発する。声が震え、涙が出るかもしれません。
でも、落ち着いたあとに、こう伝えられたらいい。
「心配で心配で、どうにかなりそうだった。顔を見たら安心して、急に腹が立ったの。怒鳴ってごめんね」
怒りを感じたら、まず一呼吸置く。できればその場を離れる。そして自分に問いかけてみる。
——私は本当は、何を感じているんだろう。
不安なのかもしれない。悲しいのかもしれない。寂しいのかもしれない。
怒りは悪い感情ではありません。心の奥にある大切な気持ちが、届けようとしているサインです。
次に腹が立ったとき、その奥にある本当の気持ちに少しだけ耳を傾けてみませんか。
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