「会社、辞めます」
小出さん(仮名)は、産業医面談で涙ながらにこう宣言しました。
非常に期待されて入社した方でした。研修後、配属希望は何回もていねいに聞かれたそうです。同期は3人。それぞれ別の部署を希望し、部署の方も受け入れるつもりでした。
普通に考えれば、3人とも希望どおりに配属されると思いますよね。
ところが、3人が3人とも希望と違う部署に配属されたのです。数年後、一人は体調を崩して働けなくなり、一人(小出さん)は退職しました。
なぜ、双方にとってマイナスな選択をするのか?
希望と違う部署にあえて配属するには、決める側(この場合は会社側)がそれなりに説明できる理由が必要です。わざわざ手間ひまをかけて理由を考え、相手ががっかりする決定をする。結果として、会社も人材を失うわけです。
実はこういう場面、結構多いんです。私自身も似たことをされた経験がありますし、産業医としても何度も出くわしてきました。
「案外意地が悪いんだな・・・」と思いつつ、個人の問題と片付けるには、あまりにもあちこちで見聞きするんですよね。
1990年代の実験が示していたこと
この長年の謎、実は行動経済学の研究でとっくに明らかになっていました。
大阪大学社会経済研究所の西條辰義教授(当時)らのグループは、1990年代から、「お金を出し合って『みんなで使えるもの』をつくる実験」を日米で行いました。日本は2大学、アメリカも2大学の学生が参加しています。
すると日本の参加者には、自分の取り分が少し減ってでも、相手の取り分を大きく減らす選択をする傾向がはっきり見られたのです。これを経済学では「スパイト(いじわる)行動」と呼びます。アメリカの参加者は「相手は相手、私は私」と、自分の利益を最大にする選択をする人が多かったそうです。
経済評論家の加谷珪一さんは、こうした日本人の傾向が新しいビジネスの芽を摘み、経済の低迷につながっていると指摘しています。
確かに、新しいものが出るたびに足りないところをあげつらって叩き、その間に海外がさっさと磨き上げて市場を席巻する・・・そんな光景、何度も見てきましたよね。
では、どうしたらよいのでしょうか?
まずは、自分たちにはこういう傾向があると知っておくことだと思います。
なんとなくモヤモヤしていたことが言葉になると、「いかん、いかん。足を引っ張るより、新しさに目を向けて応援しなくちゃ」と立ち止まれるようになります。
次に誰かの新しい挑戦を見たとき、粗探しの前に「どこが面白いか」を一つ探してみませんか?
あなたは、この研究結果をどう感じますか?
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