一生懸命に仕事をしていると、ついつい陥りがちな視点ってありますよね。言われると当たり前なのに、自分では見落としていしまう。
ある日の産業医面談で真面目な管理職のお一人と話をしていてそんなことを感じました。この方を小出さん(仮名)としましょう。
「良い上司」ほど陥りやすい落とし穴
小出さんは、部下との関係に悩んでいました。
ある部下が急に休みがちになった。話を聞くと「最近忙しすぎて体調が優れない」と言う。小出さんはすぐに受診をすすめ、その部下の業務を細分化して他のメンバーに振り分け、負担を軽くしました。結局その部下は休職の診断書が出て、お休みに入りました。
それでも小出さんは、その部下が休職中も「復職までに何をすればいいでしょう」と悩み続けています。良い上司と言えるとも思います。
でも、産業医の目線から言うと、小出さんが見落としていることがあるんです。何だと思いますか?
休職者にはサポートがつく。では、残った人は?
休職に入った部下には、実はたくさんのサポートがついています。家族を始めとして、主治医・上司・人事・産業医。少なくともこれだけの人が、その部下を支えているんですね。
一方、職場で踏ん張って、変わらず仕事をしている部下たちはどうでしょう。特別なサポートは、何もつきません。
一人の体調不良者が出るということは、その裏に、体調不良を感じながらも頑張っているたくさんの人がいるということです。体調不良の原因は、業務量の多さや職場の人間関係であることが多い。だとすれば、休職した一人だけが不調で、他のメンバーは健やかそのもの、なんてことは、まずありえないと考えたほうがいいんです。
私が小出さんに伝えたこと
残ったメンバーは、ただでさえギリギリで踏ん張っているところに、さらに業務が上乗せされる。これが実態です。私は小出さんに、こう提案しました。
「残ったメンバーに、今まで以上にポジティブ・フィードバックをしてあげてください。皆さん、きっとギリギリで踏ん張ってくれていますよ」と。
小出さんの目は、休職した部下だけに向いていました。でも、その部下にはもう各方面のサポートが始まっています。いま小出さんが目を向けるべきは、それ以外の職場のメンバーなのです。
大切なのは「割合」を変えていくこと
どちらか一方を100、もう一方を0にしましょう、という話ではありません。サポート体制の整った部下に向ける割合は少し下げても大丈夫。その分を残ったメンバーに手厚く。そのバランスを、状況に応じて変えていく。それが大切なんですね。
休んでいる人の分を肩代わりするのは、決して当たり前のことではありません。通常業務で手一杯の職場も多いはずだからです。
お互い様だから、と当たり前じゃないことをやってくれている——そのことを、上司の私はちゃんと見ていますよ、感謝していますよ、と伝え続ける。それも、きちんと言葉にして、伝わる形で。
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