日頃、産業医をしていて、あるいは研修をしていて、なんとかならんかなぁと地団駄を踏む思いになることがあります。それは、産業医と(私と)話をして、従業員の方が「良いこと聞いた!」「なるほど!」と言っても、研修で「そうか!!」と思ってくれる人がたくさんいても、悲しいかな、ほぼその場限りということです。
こんにちは。産業医・伝え方コーチの本間季里です。限りあるエネルギーを本当に大切なことに使うためのコツをお伝えしています。中心はコミュニケーションや上手な時間管理・習慣化。
特にコミュニケーションでは、世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴うなかでも協調していくための伝え方のコツをご提案しています。「頭でわかった」ではなく、実際に身につき日常で使えることを目指します。
その場限りはあなたのせいではない
そういう話をすると、「ほんと、すいません。学んだことを実行できなくて・・・」と頭をかきかきする人がほとんど。でも実は、それは実行できない人のせいではないのです。
私だってそうですしね。
いつも言っていることですが、「脳は現状維持がデフォルト」「新しいことはストレスがかかる。脳はモノグサなので、やらないですむようにしたがる」ということなんです。
形状記憶合金(今は殆ど聞かなくなりましたね)のようなもので、元に戻ろう、もとに戻ろうとするのです.
では、知識を行動に落とし込むことは無理なのでしょうか?いいえ、そんなことはありません。
1on1で時間を決めて取り組んでみる
例えば、研修で心理的安全性について学ぶとします。よほどのへそ曲がりでない限り、心理的安全性が醸成されている職場はチャレンジもできるし、リスクも取れる。生産性も高い、ということは理解できると思います。
たいていの研修はそれで終わり。「たしかにな〜」「勉強になりました」「明日から実践してみます」で終わりです。最後に明日からやろうと思ったアクションを発表するというワークを行う研修もあります。でも、そのワークも含めてその場限りとなってしまいがち。
そんなときに、形骸化してしまっている(!)1on1を使うのはどうでしょうか。3ヶ月は「心理的安全性を育む」をテーマにする。その後は、経営層がうち出した中期計画や経営理念を、自分の仕事に落とし込むとどういうことをすることなのか噛み砕いてみる、などです。
例を上げると・・・
心理的安全性をテーマにした場合・・・
1ヶ月目:「心理的安全性を育むために、まず職場での自分の行動としてできることは何か?」を話し合う。
2ヶ月名:「実践してみてどうだったか?」
3ヶ月目:「変化を感じることがあるとすればどんなことか?」
などなど。
テーマがざっくり決まっていれば、1on1が億劫でなくなるというメリットもあります。毎回「何を話そう・・・」と迷うことがなくなり、話すことが仕事の進捗確認と上司の指示という形骸化も防げます。
人は接触時間に比例して受け入れやすくなる
- 何回も会っているとだんだん親しみを感じるようになる。←だから営業の人は足繁く通うわけですよね。
- 時間をかけて取り組むと、段々とわかるようになってくる。
- 頻繁に考えていると、そのうちに「ずっと前から考えていた」という気になる。
そんな経験ありませんか?
せっかく研修をするのですから、そのとき「感激したぁ!」という一瞬芸で終わらせず、行動が変わるようにしていきたいですよね。
月1時間でも、定期的に話をしているうちに馴染んでいきます。心理的安全性が特別な話題ではなくなり、身近な事柄になって初めて自分ごととして考えられるようになってくるもの。ときには1on1をこんなふうに使ってみませんか?