「やる気あるの?」と言いたくなったら――相手も納得する「事実」で話す

ある言葉を聞いたときに何をイメージするか、どう受け取るのか。これは人によって大きく違いますよね。

世代によっても違うし、時代によっても変わってくる。今日は、職場でよく起きる「言葉の受け取り方のズレ」の話です。

同じ失敗を繰り返す後輩に、先輩が言ったこと

入社3年めの青木さん(仮名)は、ちょっとおっちょこちょいです。典型的な、明るいお人好し。こういう人がチームにいるとムードが明るくなっていいですよね。

でも、おっちょこちょいなので、同じ失敗を繰り返してしまうことがあります。

先輩社員の杉下さん(仮名)は几帳面。緻密に仕事をするので、青木さんとは正反対のタイプです。杉下さんは、青木さんが繰り返す失敗を、信じられない思いで見ています。
ある時、青木さんは先週注意されたばかりの失敗を、またやっちまいました。見積書を変更したら、それに連動して何箇所か直さなければいけないのに、見落としがあったのです。

杉下さんは落ち着いた声でしたが、青木さんにこう言ったそうです。
「真剣にやってほしいな」
「やる気があるのかな」
「もっと集中してください」

青木さんは落ち込み、予約を前倒しして面談に来ました。

あなたも、後輩にこういう注意をした経験があるのではないでしょうか? ついついこういうセリフを言いたくなる気持ちは、わかります。

だって、真剣さがもっとあれば防げたかもしれない。やる気に満ち満ちていたら、ミスのリスクはたしかに減っていたでしょう。もっと集中していたら、もう一回確認をして早めに気づいたかもしれませんよね。

言われた側は、どう感じたか

今日あなたにお伝えしたいのは、こう言われて青木さんがどう感じ、どう答えたか、ということです。
それは、あなたが青木さんの立場だったときにも同じことを言ったかもしれないし、言わないまでも、きっと考えたことだと思うから。
青木さんは当然ですが、こう答えました。

「自分だって真剣にやっていますよ!」
「やる気はあります!」
「集中しています!」

もちろん、「ミスをした自分が悪い」とは思っています。反省もしている。
「でも!」と涙を浮かべて青木さんは訴えました。私は掛ける言葉もなく・・・

こういうこと、身の回りで頻繁に起きていますよね。

このコミュニケーションの2つのデメリット

こういうやり取りになってしまうと、デメリットが2つあります。

1つ目:論点がすり替わってしまう

本当は「うっかりミスを減らす」ということが、両者にとって望ましいゴールのはずです。
しかし、杉下さんのように言ってしまうと、「やる気があるかないか」「真剣かどうか」「集中しているかしていないか」が論点になってしまいます。

これでは、コミュニケーションの目的が果たせていませんよね。

2つ目:信頼関係が作りにくくなる

両者の関係に良くない距離ができてしまい、信頼関係を作り上げることが難しくなってしまいます。
先輩の杉下さんは「もっと真剣にやって欲しい」、一方の青木さんは「真剣にやっているのに!」。

要するに、青木さんは「杉下さんは自分のことをわかろうともせず、一方的に決めつける」と感じ、杉下さんは「青木さんは素直に非を認めない」と感じてしまうのです。

ズレを防ぐポイントは「事実ベース」で話すこと

こういうコミュニケーションのズレは、防ぐことができます。ただし、練習は必要。だって、いつもの自分のコミュニケーションを変えていくのですから。

野球の選手が打撃フォームを変えるために、オフのワンシーズン全部を使ってトレーニングを重ねるのと同じです。
コミュニケーションのズレを防ぐためのポイントは、

やる気や真剣さといった目に見えないものを取り上げるのではなく、事実ベースで話をすること。

それも、相手も納得する事実で話をすることです。

事実は、人によって違う

「事実は事実なんだから、ズレはないでしょう?」と思いませんでしたか?
事実は、人によって違うんです。

80%できておらず、20%できていることについて、当事者はできている20%に着目するもの。一方で、周囲の人は80%のできていない部分に着目し、修正を求めます。

同じ出来事を見ていても、見ている場所が違う。だから、「相手も納得する事実」で話をする必要があるのです。

今回の青木さんのケースで言えば、

「見積もりを修正したら、連動して修正箇所が出てくるよね。そこを忘れたんだね」
これが、相手も納得できる事実です。

ここで事実の捉え方がそろうと、次は「じゃあ、次回から、連動して出てくる修正箇所を忘れないために、どんな工夫ができる?」という話の流れに行きやすくなります。

これなら、杉下さんが青木さんを追い詰める形にもならず、青木さんは萎縮せずにすみます。一方で、杉下さんの気持ちも落ち着いていられるのです。

まとめ

無用なエネルギーを使わず、伝えたいことが伝わって、課題の解決に向かう。
そのために、「やる気あるの?」と言いたくなった瞬間こそ、一呼吸おいて、「相手も納得する事実」は何だろう?と整理してから伝えてみてくださいね。

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この記事を書いた人

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本間 季里

少人数の会社でも産業医が必要な理由
産業医・伝え方コーチ:本間季里

「社員一人ひとりが健康的に働き、会社が成長していける職場を目指したい」という理念のもと、心身の健康を支える産業医です。

少人数の職場では、産業医のサポートによる健康管理や職場環境の改善が会社の成長に直結します。そこで、従業員50人未満の会社の産業医業務に特に力を入れています。

私の産業医としての強みは、傾聴、質問、わかりやすいアドバイス、的確な判断の4つのアプローチを組み合わせ、経営者と社員の支援を行っています。10年以上の経験を持ち、日立製作所、長崎大学など、幅広い業種で産業医を務めてきました。

企業規模に関わらず、経営者が経営に専念でき、社員が心身ともに健康で働ける職場の実現を目指します。

資格:日本医師会認定産業医・医学博士
アサーティブジャパン会員トレーナー
コーチングプラットフォーム認定コーチ
Gallup社認定ストレングス・コーチ

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