先日の産業医面談で、経理課の米沢さん(仮名)がぽつりとこう言いました。
「月次の締め、一度も遅らせたことがないんです。でも角田課長からは『まあ堅実だよね。ただ、もう少し全体を見てほしいかな』って。……あれ、私、褒められてるんでしょうか?」
「褒められてるんでしょうか?」と聞き返したくなる時点で、褒められた実感はゼロなんですよね。
「けど」の後ろだけが、心に残る
人は、最後に聞いた言葉ほど強く印象に残ります。これを心理学では「新近効果」と呼びます。直前に受け取った情報のほうが記憶に残りやすい、という心の働きです。
だから「よくやってるけど、もう一歩」と言われると、頭の中に居座るのは「もう一歩」だけ。「よくやってる」のほうは、ただの前置きとして流れていってしまう。
しかも「けど」は、前半を打ち消すための接続詞です。言った本人は足し算のつもりでも、受け取る側には引き算として届いているんですね。
課長は、ちゃんと評価していた
後日、角田課長ご本人と話す機会がありました。開口一番、「米沢さんは信頼してますよ。数字を任せられる人です。だからこそ、次のステージに行ってほしくて」。
そう、評価していないどころか、期待していたのです。
ところが、評価と期待をひとつの文に詰め込んでしまった。その結果、届いたのはダメ出しの部分だけでした。こういうすれ違い、本当にたくさん見かけます。
一文に、ひとつの気持ち
コツは、たったこれだけです。切り分けて、二回に分けて伝える。
まず、評価だけを言い切る。
「毎月きっちり締めてくれて、本当に助かってる。ありがとう」
ここで一度、句点を打ちます。相手が受け取る時間をつくる。一呼吸おく。
そのうえで、期待を別の文として渡す。
「その上で相談なんだけど、来期は部門全体の数字も一緒に見てもらえないかな。米沢さんならできると思ってるんだ」
あなたが誰かを認めた言葉、その後ろに「けど」がついていませんでしたか?今日ねぎらう場面があったら、そこで一度、句点を打ってみてくださいね。
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