「部下には、わからないことあったら何でも聞いてって言ってます!これ以上どうすりゃ良いんですか!」
と、産業医にヒステリックに詰め寄る管理職。
たまにですが、詰め寄られます。管理職も余裕がないんですね。冗談ではなく、管理職の方に「あなたも産業医面談受けませんか?」と声かけること、あります。
こんにちは。産業医・伝え方コーチの本間季里です。世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかで、それでも妥協点を見つけて協調していくための伝え方をご提案します。「頭でわかった」ではなく、実際にやれるまでしっかり寄り添います。
一方の部下にじっくりと話を聴くと・・・
「そうは言ってくれるんです、たしかに・・・でも、わからないことがあって質問すると、嫌そうな顔されたり、『忙しいのに』って言われたり、『調べてから聞けよ』って言われたり・・・でも、どこを調べたら良いのか探すだけですごく時間がかかるんです。
なら、ここを調べたらわかるよ、って言ってくれれば、探している時間は減らせるでしょ。何時間も探して無駄だと思うんです。資料の場所をさがすことが努力だとは思わない。」
心のなかではこの部下くんに、相撲の行司よろしく、静かに軍配を上げています。
部下くんが置かれている状況がダブルバインド(二重拘束)で混乱しているということなんですね。
例えば、
●「何でも聞いて」と言ったのに、聞いたら怒られる、答えてくれない。
●「ミスの経緯を説明して」と言われて説明したら、「そんなの言い訳だろ?」と説教が延々と続いた。
●どんどん意見を言おう、と言われたので意見を出したら「なら、お前がやれよ」と丸投げされて業務負荷が高まった。
こういうこと、日常でよくありませんか?
「何でも聞いて」と言ったなら、聞かれたら向き合おうよ。
もしそのとき忙しいなら、「今は忙しくって無理なので、〇〇時に時間作るから待てる?」
という一言があるかないかが、コミュニケーションでは雲泥の差を生むんですよね。この一言があれば、「何でも聞いて」はその通り実行されたことになり、一貫性を持つわけです。
でも、嫌な顔をする、「忙しい」「調べてから聞けよ」と言われ放置されるというのは、言ったことに一貫性がなくなり相手を混乱させることになります。
そのとき混乱するだけなら、まだいいんです。でも、人間は体験から学習をします。そして、学習をしたことをもとにその後の行動を変えていくのが問題なんです。
「わからなかったら何でも聞いて」という言葉を信じてはいけない。
ここでは人を頼ったらえらい目にあう。
なんでもわかっていないと放り出される。
例えばこんなことを学習してしまったらどうでしょう。そうやって心を閉ざした若手社員をたくさん見てきました。
すると今度はこう言うんです。「最近の若手は、心を開かない」
いや、その原因の一端は、長く働いている側の対応にもあるんじゃないかな?
ダブルバインドには気をつけよう。言った言葉には責任を持とう。今が無理なら「いつなら良いのか」の言葉を一言つけて、言葉に一貫性をもたせよう。
それだけで随分、職場は明るく、皆さんがよく使う「風通しの良い職場」になるように思います。