産業医というのは、企業のなかでちょっと不思議な立場だなと思うときがあります。全くの部外者でもなく、だからといって多くの従業員の方たちと同様のラインに組み込まれているわけでもない。
だから従業員の方の中には、社外の人に相談をするより産業医と話をするほうが気が楽ですという人もいます。なぜなら、いちから会社のこと、自分の業務、あるいは状況の特殊性を説明する必要がないからです。従業員が属しているチームの外側だけれど、会社という枠組みの内側に入るというこの立ち位置とでもいうのでしょうか。
こんにちは。産業医・伝え方コーチの本間季里です。世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかで、それでも妥協点を見つけて協調していくための伝え方をご提案します。「頭でわかった」ではなく、実際にやれるまでしっかり寄り添います。
人はなかなか自分を他者目線で客観的にみることができない生き物です。だから鏡を発明したし、コーチングやコンサルティングという仕事が生まれた。
例えば昔の話ですが、自分としてはいつもと同じように仕事をしているだけなのに、月曜日の午前中に、後輩から「先生、なにか怒ってます?」と聞かれることがたびたびありました。曜日別で統計を取ると有意差をもって月曜日の午前中というくらいの違い。
これって「先生、なにか怒ってます?」というフィードバックをもらわないと自分では気がつかないですよね。
この種明かしをすると、金曜日に仕事が終わってから月曜の朝までずっと一人で過ごしていたので、月曜午前中はずっとこの一人モードが続いていたのだろうと思います。何回か同様のフィードバックをもらい、特に月曜の朝は鏡の前で表情を確認してから出勤するようになりました。
また、コロナ禍になってリモートで仕事をすることが一気に増えました。ビデオ会議で画面に映し出される自分の口角が下がった暗い顔に愕然としたという方も多いかもしれません。私もその一人で、おかげさまで笑顔を意識することが増えました。これも、フィードバックですよね。
資格試験とか、TOEICなどのテストも同様。客観的な現在の力をフィードバックしてもらえる機会と受け取るといいですね。
このように人は、様々なフィードバックをもらうことで、はじめて自分の現状を意識することができます。
組織やら職場やらも同じではないかな?
そこで働く人は、その組織の良いところにも「?」というところにも適応しています。自分と組織がすでに同化している状態とでも言うのでしょうか。自分で自分のことを客観視できないのと同様、自分が属している組織のことを客観視できる人は少ない。
その証拠に、外から見ると「え?」ということを、「それはここの文化だから」「それはうちのやり方だから」と言って受け付けられないことは多々あります。
客観的なフィードバックがその通りかそうでないかは後でゆっくり考えるとして、一旦はあなたの中のリストに載せてみませんか?そうでないと改善のチャンスを逃すことになるかもしれません。あるいは、あなた自身の良さを認識できるチャンスを逃すことになってしまうかもしれません。
だからこそ、私は率直にフィードバックをすることを心がけているし、フィードバックに対しても「へえ、そうなんだ」という姿勢で一旦は受け取るということを心がけています。