何も言わずとも、黙って成果を出している人に力を注ぐ

前職で基礎研究をしていたとき、いろいろな人が研究室に出入りしていました。当然ですが、研究生活に馴染んで成果を出していく人もいれば、なかなか成果が出ない人もいます。成果が出るでないは研究テーマの運不運にもよるのですべてが本人の責任ではありません。ただ、なかにはどうしても研究が向いていないだろうなという人もいました。

こんにちは。産業医・伝え方コーチの本間季里です。世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかでも協調していくための伝え方をご提案します。「頭でわかった」ではなく、実際にやれることを目指します。

デキる人は貧乏くじを引かされる

さて、どうしても研究が向いていないだろうなという人、特にそれが大学院生の場合はそれでもテーマを与えてなんとかデータを出せるように工夫をしていかねばなりません。

そういうときについついやりがちなのが、要領よくできない人には高価な実験キットを使わせるというやり方です。一方で、黙っていても工夫してやっていける人はずっと手間ひまかけて実験をする羽目になる。

一部の研究室を除いては潤沢な研究費などないので、研究費の分配の仕方によってメンバーの不平不満は大きくなります。

努力して器用にやれば、ずっと手間ひまかけて貧乏くじ。できない人に対してはどんどん高価な試薬やキットが提供される。これ、反対じゃない???成果を出している人にこそ投資をすればよりスピーディに結果が得られるんじゃないの?

会社組織でも同じことが起きている!

さて、産業医として職場のお悩みを聞く立場になると同じような話をよく聞きます。

黙っていても現状の範囲内で工夫して成果を出しているメンバーにはそれが当たり前になってしまって、ほとんど上司から声をかけられることもない。一方で問題があるメンバーには、上司からあれこれとサポートが入り、業務分担の見直しなども適宜行ってもらえて負担が軽くなる。

なんだよ、頑張っていると放置かよ!ふとそんな言葉が脳裏をかすめる。

本当はわかっている。人にはキャパというものがあってキャパはひとりひとり違う。自分はキャパがある方だ。だから踏ん張らねばならない・・・だけど・・・それが当たり前って顔されるのは何なんだ。当たり前じゃない!努力しているんだ。

徐々に不満が募っていく。理屈と自分の感情の板挟みになって葛藤が大きくなる。

あなたの職場にもこんな方いませんか?あるいはあなた自身がこんな問題を抱えていませんか?

上司が気をつけたいこと

それはズバリ、黙っていても成果を出している人に最も時間とエネルギーを使うということです。実はこの黙っていても成果を出している人が職場ではマジョリティのはず。そしてこのマジョリティ層が一番放置されてしまいます。

しかし、この層が職場を支えていると言っても過言ではありません。

いや、気にかけていますよ、とほとんどの管理職がそう言います。でも、日頃、これらの一人ひとりにどんなポジティブ・フィードバックしていますか?今日、どんな感謝の気持を伝えましたか?と聞くと、「いや、そんなこといちいち言いませんけれど、わかっていると思いますよ」

いいえ!伝わっちゃいませんよ!上記の基礎研究時代の私のような不満を持っています。

もちろん褒めてもらうために働いているのではない。しかし、粛々と仕事をしていると、いつの間にか上司や周囲の人にとって透明人間になってしまう。

すなわち、私たちにとってポジティブフィードバックや感謝の言葉などは、結果的に存在承認に繋がっていくのです。自分は決して透明人間なんかじゃない。ひとりの人間としてちゃんと認められているという自分の揺るぎない存在価値に繋がっていくのです。

さあ、職場に行ったらあれこれ言わずとも粛々と仕事をして成果を上げている多くのメンバーに声をかけて歩きましょう。

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この記事を書いた人

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本間 季里

産業医、伝え方コーチ、ストレングス・コーチ

大学卒業後、小児科医・免疫学の基礎研究者を経て、2017年より、世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかで、それでも妥協点を見つけて協調していくための伝え方を提案し、個人と組織の両方にアプローチできる産業医・伝え方コーチとして活動中。

セッション数は7年間でのべ3000回以上、これまで300名を超える方々に伝え方の講座や研修を提供し、満足度が90%以上です。

資格:医師・医学博士・日本医師会認定産業医
NPO法人アサーティブジャパン会員トレーナー

Gallup認定ストレングス・コーチ

詳しくはこちらのプロフィールをご覧ください。