【研修の大問題】一番参加してもらいたい人が、研修に参加しない!

産業医・伝え方コーチの本間季里です。

今年も企業研修のご依頼をいただいています。継続でご依頼いただくことが多くて嬉しい限りです。

「本当に研修を聞いて欲しい人は参加しない」問題

さて、研修の打ち合わせのときによく話に出るのが、
「本当に研修を聞いて欲しい人は参加しない」ということです。

あなたの周囲でもこんな話、でたことありませんか?

例えば・・・
●「あの上司のしかり方、ハラスメントだよね」と同僚同士でこっそり話をしている。
社内では何度もハラスメント研修が行われているけれど、この上司が参加することはない。

●良くない報告をするとすぐに怒り出す上司。
「アンガーマネジメントの研修にでて欲しい」と周囲は思うが、本人は全くその気なし。部下が上手に報告しないからだとか、苛立たせることを言うからだと全部他人のせい。

だから企画側からは
本当にこのテーマの研修が必要な人は研修に参加しない。参加する人は研修が必要ないくらい、良く勉強しているし実践している人が多い。研修を企画する側としてジレンマです」

一方、参加者からは
本当にこのテーマの研修が必要な人は研修に参加しない。だから研修なんて意味ないんじゃないのか?」

あなたも社内研修などで、ふとそんなことを思ったこと、ありませんか?

さて、この問題、あなたならこういう意見に対してどう考え、どう答えるでしょうか?

社内研修の真の意味

では、研修は意味がないのでしょうか?いいえ、意味はあるのです!今日、本当にお伝えしたいのはここです!

本当に研修が必要な人はそうそう変わらないかもしれない、でも、その周囲の人たちの考えや世の中の常識が変わっていくことが大切なのです。

周囲の人たちが「私が考えていることは正しいんだ」「私が常識と思っていることはやはり今の世の中の常識なんだ」と自信を持ち、職場の共通認識が変わっていくことが、隠れた研修の目的と言っていいでしょう。

セクハラが認知されたプロセスを考える

社内、あるいは職場の共通認識を広めていくことが隠れた研修の目的だという点を、更に掘り下げて考えてみましょう。

例えば平気でセクハラをする人が職場にいるとします。昔はそれが普通のことでした。

でも長い時間が必要でしたが、今ではセクハラはいけないこと、相手がとても傷つくこと、という社会の共通理解が広まりました。

まず、セクシャル・ハラスメント(セクハラ)という言葉が生まれ、「仕方がない」と諦めていた行為に名前がつきました。

セクハラがどれほど相手を不快な思いにさせ、それを見聞きする人たちにも大きな影響を及ぼすことが頻繁に言われるようになりました。

セクハラは組織のリスクと捉えられ、研修もたくさん行われてきました。そしてセクハラで社会的制裁を受けることも珍しくなくなりました。

共通認識が浸透するとグレーゾーンの人たちの行動が変わる

何ごとも考え方には強さの段階があります。

セクハラを例に取ると、
「セクハラをしない人」→ホワイトな人
「セクハラと言われると心外で、単に親愛の情を表しているだけだという考えだが、周囲に合わせようとする人」→グレーな人
「世の中がどうであっても考えを改めない人」→ブラックな人
に分かれます。

今でも本心では納得していない人はたくさんいるでしょう。

たとえ心の中は納得していなくとも、行動面でセクハラをしない人は圧倒的に増えました。

つまり、上の分類でいうとグレーゾーンの人がセクハラという行動をしなくなったと思われます。

この層には、形だけセクハラをしないでいるうちに「そういう時代じゃないんだな」と意識が変わっていった人も実はたくさんいるはず。

研修の真の目的は組織内の共通認識を変えていくこと

この過程は私たちに、問題行動をしている人の考え方を直接変えることはできないかもしれない。でも、組織・職場・社会の共通認識を変えていくことが、まずはグレーゾーンの人の行動を変え、その後に意識を変えていくことができることを示しています。

研修が必要ないくらい良く勉強しているし実践しているあなたこそが研修に参加する意味があるのです。

あなたこそが、組織の共通認識をゆっくりと、でも確実に変えていく力だからです。

ゆっくりとした変化は目に見えにくい。だから軽視されがち。でも、それを続けていくしか方法はない。

そして研修はそのためにある。

だから、最も研修に参加して欲しい当事者が参加しなくとも良い。

この記事を書いた人

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本間 季里

少人数の会社でも産業医が必要な理由
産業医・伝え方コーチ:本間季里

「社員一人ひとりが健康的に働き、会社が成長していける職場を目指したい」という理念のもと、心身の健康を支える産業医です。

少人数の職場では、産業医のサポートによる健康管理や職場環境の改善が会社の成長に直結します。そこで、従業員50人未満の会社の産業医業務に特に力を入れています。

私の産業医としての強みは、傾聴、質問、わかりやすいアドバイス、的確な判断の4つのアプローチを組み合わせ、経営者と社員の支援を行っています。10年以上の経験を持ち、日立製作所、長崎大学など、幅広い業種で産業医を務めてきました。

企業規模に関わらず、経営者が経営に専念でき、社員が心身ともに健康で働ける職場の実現を目指します。

資格:日本医師会認定産業医・医学博士
アサーティブジャパン会員トレーナー
コーチングプラットフォーム認定コーチ
Gallup社認定ストレングス・コーチ

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