こんにちは。コミュニケーションスキルと自分の強みを活かすことにより、ストレス軽減のサポートを行うストレスマネジメント・コーチの本間季里です。
亡くなった父は、スーパーをはしごして日用品や食料品の買い物をするのが好きな人でした。母が元気な頃は夫婦で、母が亡くなったあとは娘の私とよく買い物に行ったものです。
父と買い物をしている時にたびたび、中年の娘や息子が高齢の親を叱りつけながら買い物をしている姿を見かけました。親がかごに入れた商品を「これは家にたくさんあるでしょ!」「さっきも同じこと言ったでしょ!」と大きな声で言いながら棚に返していたり、「○○が食べたいなら、✗✗も必要だし。さっきからどちらかに決めなきゃ、って言ってるじゃない!だいたい一人で作れるの?」
たいてい高齢の親は何も反論もせず、少しはにかむような表情で黙ってスーパーのカートを押しています。父はそういう場面を見ると「怒られちゃってるよ。」と面白そうに笑っていましたが、私はとてもじゃないけど笑ってはいられませんでした。叱られている高齢の親が、まさに私の父と重なって切ない気持ちになったこともそうですが、娘や息子の怒りの裏側にある感情を考えていたのでした。
怒りの感情というのは、しばしばその裏側に別の感情が張り付いていることが多いものです。その感情をしっかり見つめないと、同じような場面に出会ったときに、いつまでも繰り返し繰り返し怒りの感情が湧き上がってきてしまいます。怒りの感情の取り扱いは注意が必要です。
高齢の親に対して抱く怒りの裏側にある感情とは何でしょう。もちろん人それぞれでしょうが、不安や切なさではないでしょうか。不安や切なさをかきたてるのは、
- 高齢の親が昔とは異なりできないことが増えてきたけれど、それを認めたくない。
- 色々なことをちょっと忘れているだけ。意識を変えれば以前の親に戻るはず。
- ずっと大きな存在だった親の小さくなった姿はできれば見たくない。
- まだ元気だ、しっかりしていると思いたい。その希望的観測を裏付けてくれそうな事実をついつい集めたくなる。
こんなところでしょうか。
怒りの素は、相手の行動によってかきたてられる自分の感情。何によって自分の感情が動かされるのかを理解していれば、高齢の親の行動をみて怒りの感情が湧いてきたとき、「ああ、自分は切ないんだな。そうだよな」「自分は不安なんだな」と自分の気持ちを受け止めることができます。そうなると怒りの矛先が親に向かうこともなくなるでしょう。ただ、しみじみと切なさを噛みしめる、そんな事ができれば親との関係性も変わってくるでしょうし、叱られて萎縮してしまう親の側の気持ちも和らいでくることでしょう。