こんにちは。産業医・伝え方改善コーチの本間季里です。世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかで、それでも妥協点を見つけて協調していくための伝え方をご提案します。「頭でわかった」ではなく、実際にやれるまでしっかり寄り添います。
私のデスクに、フクロウのぬいぐるみがあります。以前、倉敷市にあったチボリ公園に遊びに行った人からのお土産です。
10年ほど前、前職で大学の教養教育にも関わっていたのですが、多様性に関する授業を担当しました。そのとき、このぬいぐるみ君に活躍してもらったことがあります。
教室の真ん中にフクロウのぬいぐるみを置き、学生には自分の座っている位置から見えるフクロウの一部分を言葉にしてもらいます。
●胴体部分が水玉模様だとか、
●羽があるとか。
●黄色いものが見えているけれど、形はわからないとか。
一人ひとりは自分の位置から見える部分しかわかりません。したがって全体像はつかめません。
まず、自分の場所から見えることを忠実に言葉で伝えてもらいます。それぞれの情報は全体のほんの一部。フクロウのぬいぐるみを正反対の位置から見ている学生には、聞けば聞くほど一体どんなぬいぐるみなのかわからず、困惑の声が広がりました。
でも、学生全員の情報が出尽くして、それらを集約すると、あら不思議、フクロウ君の全体像がものの見事に表現できました。
一人ですべてをカバーできないことはたくさんある。でも、そんなときも多様な視点を持った人が集まると自然と全体像が見えたり、深みが増したりするものです。
そして何より、自分が見えているものを伝えればいいだけで、一人で頑張らなくていい!というところもミソですね。多様性といっても、それはじつは国籍や属性ではなく、視点の多様性が大事であり、個人の視点を持ち寄ることが大切なんだな、と学生に感じてもらいたくて行った授業でした。
もちろん社会の中で起きている問題や、仕事の場ではこんなふうにはいかないことも多いでしょう。多様性を受け入れるということは、価値観のぶつかり合いになることもたくさんあります。面倒くさいし、手間隙かかるものと言う認識は大切。
自分には自分の価値観に基づいて意見を言っていいし、相手にも同じように意見を言う自由はあります。そこで対立が起きることもある。意見が対立すると、ついつい勝ち負けで考えがち。
そのときに、自分の意見か、相手の意見か、という話ではなく、第3案が出てきたり、もっと驚くような発想が出てくることもあります。多様性を受け入れるということは、そのような可能性を目指すということ。
そのためにも、自分の意見をいかに伝え、そして相手の意見にも耳を傾けるという建設的なキャッチボールができるような対話の方法を持っていると良いですね。