コミュニケーションを図るために飲み会、という考えは断舎離すべし

個人的には新型コロナ感染症は決して終わったわけではないとは思っていますが、少なくとも次のフェーズに入ったことは感じます。

周囲を見ても、今までオンライン一辺倒だった研修やセミナーが、以前のような集合型に戻りつつあります。

出社をする人も増えていますし、3年前、閑散としていた銀座にも人の波が戻りつつある。

それはそれでいいことですが、コロナ禍前からずっと懸念していたことが全く形を変えずに復活しそうでゲンナリしていることがあります。

それは・・・

「部下とコミュニケーションを図るために飲み会」が復活を遂げるのではないかということ。

こんにちは。産業医・伝え方コーチの本間季里です。世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかで、それでも妥協点を見つけて協調していくための伝え方をご提案します。「頭でわかった」ではなく、実際にやれるまでしっかり寄り添います。

産業医としての懸念

そう、私が懸念しているのは、

「部下とコミュニケーションを図るために飲み会」

の大合唱が復活することなんです。

今さら、そんなこと言う人いるのかよ!!と思うかもしれませんが、いるんです!たくさん・・・

逆にコロナ禍ではさんざんこんな言葉を聞かされてきました。

●オンラインだから、部下が何を悩んでいるのか掴むのが難しいんです。

●オンラインだから表情がつかめない・・・ビデオで表情をみるってのもありだけど、隣りにいるのとは違うからね・・・

●オンラインだから・・・できない

●オンラインだから・・・

●オンラインだから・・・

自分がコミュニケーションの本当の意味を誤解しているのを棚に上げ、全部オンラインのせいにするな!とさんざん腹を立ててきました。

このブログでも何度も書いてきましたが、

「じゃあ、コロナ禍前は、充分なコミュニケーションが取れていたのかよ!!!」

声を大にしていいますが、決してそんなはずはないよね!!

この度めでたく、出社してみんながオフィスに集まることも解禁になったら、

「やっと飲み会もできるようになりました。もちろん前ほどお気楽にはできないけれど、これで部下とのコミュニケーションも取りやすくなる」

マジですか!この3年間、何を考えていたんですか?

コミュニケーションとは?

広辞苑によると、コミュニケーションとは「社会生活を営む人間のあいだで行われる知覚や感情、思考の伝達。言語・文字その他視覚・聴覚に訴える各種のものを媒介とする。」と定義しています。

決して砕けた場面で、仕事以外の会話を掘り起こすことを言っているわけではありません。

この定義を元に考えれば、業務中のすべての会話こそがコミュニケーションなんです。

事務連絡も、会議での進捗報告とそれを受けてのコメントやアドバイスも、業務指示や質問に対する回答も、全部がコミュニケーション。

だから単に自分のやり方で情報伝達を一方的にするのではなくて、相手が受け取りやすい方法で情報伝達するのがコミュニケーションです。例えば会社からの通達をそのまま、宛先を変えてグループ内にメール展開するのではなく、わかりやすく一部言葉を変えるとか、自分たちのグループに当てはめるとこんなケースですよ、などと補足するのがコミュニケーション。

業務指示が不明確で、無駄な時間とエネルギーを使う、という部下側のお悩みもよく耳にしますが、部下が行動に移しやすい説明と確認をするのがコミュニケーション。

だから改めて、コミュニケーションの時間を別途用意するのではなくて、すべての時間がコミュニケーションなんです。

なぜ、「飲み会がないからコミュニケーションが取りづらい」とぼやくのか?

はっきり言うと、しない・できない理由探しをしているだけではないでしょうか?

飲み会で酔っ払って、肩を叩きながら「そうだよな!」と言っていれば、和やかにコミュニケーションを取っているような幻想に浸れます。

脳の仕組みを考えるとわかりやすいのですが、人間の脳みそは、私たちが漠然と考えているよりずっと、怠け者だといいます。変化を嫌い、大きな変化を脅威と捉えストップをかけようとします。だから、新しいことに関して私たちはなかなか行動できないのです。

安易な答えらしきものが目の前に転がっていると、私たちはそれに飛びつきます。私たちが飛びつくというより、私たちの脳が飛びつくのです。ついつい飛びつきたくなる安易な答えの一つが「オンラインだからコミュニケーションが取りづらい」です。

これさえ言っていれば、工夫をしなくてすみます。これさえ言っていれば、オンライン時代の自分なりのコミュニケーションのとり方を考えなくてすみます。

脳にとっては負荷がかからず、快適なわけです。

今までのやり方そのままでは、オンラインでのコミュニケーションはうまくいかない場面も多いでしょう。だから工夫が必要なのですが、そこを省略することができます。なにか問題が起きても「オンラインだから、コミュニケーションが難しいんです」と言っていれば、なんとなくそれらしく聞こえ、周囲も深く考えず「そうだよね」と言ってもらえます。

それがこの3年間、「オンラインだから、コミュニケーションが難しいんです」の大合唱になっていた理由だと私は考えています。

では飲み会は不要なのか?

では、飲み会(やゴルフ)の位置づけはどうなんでしょう。ほんとうに不要なのでしょうか?

私の答えは不要でもあり、必要でもある。要はどっちでもいい、ってことです。

飲み会はあくまでもスパイス。料理がしっかりできあがったところで、更に引き立てるためにちょいと加えるもの。だから、なくても良い。ただし飲み会でお酒が入って、普段見えなかった上司の意外な側面が見えてすごく親近感が湧いたとか、先輩の苦労話を聞いてすごく勉強になった・感銘を受けたということはたくさんあると思います。

部下の普段は見えていない顧客に対する気遣いを知ったとか、どういう気持ちでプロジェクトに向き合っているのかとか、家族はどんなふうに支えになっているのかとか、そういうことを知って絆が強まるということもあるでしょう。

それは絆がしっかり出来上がっているから強めることができるのであって、そもそもすぐ切れちゃうような絆とか、絆がなければ強めることなんかできません。

しっかりとした絆、すなわちコミュニケーションは業務時間内のすべての時間で、業務を通じて培うものと肝に銘じてほしいものです。

伝え方に興味がある方はぜひ、ご登録ください。読むだけで、伝え方に関する視点が増え、知らず知らずのうちにあなたの伝え方が変わっていきます。

産業医・伝え方改善コーチ・本間季里のメールマガジン

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産業医として、伝え方コーチとして、毎日たくさんの方の話を聞いてきた経験を元に、「自分が疲れない話の聞き方のポイント」についてまとめた本です。
相手の役に立ち、親身に寄り添うことで、温かい関係性を作りながらも自分が疲れずに関わっていくためのコツが書かれています。
特に、身につけるスキルよりも、手放すとうまくいく考え方に多くのページを割いて、わかりやすい事例とともに解説しました。

この記事を書いた人

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本間 季里

産業医、伝え方コーチ、ストレングス・コーチ

大学卒業後、小児科医・免疫学の基礎研究者を経て、2017年より、世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかで、それでも妥協点を見つけて協調していくための伝え方を提案し、個人と組織の両方にアプローチできる産業医・伝え方コーチとして活動中。

セッション数は7年間でのべ3000回以上、これまで300名を超える方々に伝え方の講座や研修を提供し、満足度が90%以上です。

資格:医師・医学博士・日本医師会認定産業医
NPO法人アサーティブジャパン会員トレーナー

Gallup認定ストレングス・コーチ

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