激しい反論にあったとき

何かを伝えたとき、それが相手に心地良いことなら激しい反論は来ないでしょうが、相手にとって心地良いことでない場合、多くは激しい反論が予想されます。

こんにちは。産業医・伝え方コーチの本間季里です。世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかで、それでも妥協点を見つけて協調していくための伝え方をご提案します。「頭でわかった」ではなく、実際にやれるまでしっかり寄り添います。

反論されると、反論の言葉に乗って論点がどんどんズレていく

例えば、ミスを指摘した場合。忙しかったとか、自分だけじゃないとか、指示が明確でなかったんだとか・・・

遅刻が多いと注意すると、忙しくて睡眠時間が少なく疲れているんだとか、他の人も遅刻しているのになぜ自分だけ頻繁に注意されるのかとか、でもやることはやっているのに認めてくれないとか・・・

そんな反論受けたことありますよね。あるいは、あなた自身がそんなふうに反論した経験もありませんか?

反論されると、ついついその言葉に反応してしまいます。そして、伝えたかったことからどんどん話がずれていってしまいます。

杉下課長の失敗:亀山さんの必死の反論

例えばこんな感じ。

杉下課長:亀山君、資料の作成の進み具合はどうかな?

亀山さん:今やっています!

杉下課長:もう締切はとっくに過ぎているよね。部長のレビューの日は決まっているんだから、その前に課内でチェックする時間が無くなっちゃうよ。亀山君はいつも締切を守らないよね。

亀山さん:杉下課長!それは違います!ちゃんと提出したことだってあります。それはひどい。いま、大木商事の見積もりの件とか、他の人より案件抱えていてすごく忙しいんです。そこはわかってほしいです。

杉下課長:忙しいって、亀山君。みんな忙しいんだよ。それに、締切が遅れるのは本当でしょう。

亀山さん:でも、時々遅れたことはありますけど、いつも遅れたなんて言われると心外です。

杉下課長:だって本当のことだから言われても仕方ないでしょう!そういうのを言い訳っていうんです!あなたはだいたい言い訳が多すぎますよ。

亀山さん:ひどいです。課長だっていつも、自分たちがどのくらいの仕事を抱えているか考えずに、頼みやすいからって自分にばかり、急ぎの仕事振ってくるじゃないですか!

杉下課長:今はそんな話をしているんじゃないでしょう。

亀山さん:そういう話ですよ。

杉下課長:とにかく!!今日中に資料完成させて!

亀山さん:・・・(むくれている)

杉下課長はもう完全に、部下の亀山君のペースにハマっていますよね。

反論に乗ってしまうと、本当に話したかったことにたどり着かない

本当は杉下課長は、資料の進捗を確認し、課内でのチェックの時間を確保する段取りを取りたかっただけだったはず。

それが結局は

「いつも締切に遅れるのか、いつもじゃないのか?」

「杉下課長の仕事の振り方は理不尽か否か?」

「亀山君は忙しいのか、単に仕事が遅いだけなのか?」

といった論点にずれてしまっています。

そしてもっともまずいのは、課内での進捗の時間をいつ頃取れるのかに関しては、全く話が進みませんでした!

こういう用をなさない会話は、私の周囲にもあなたの周囲にも頻発していませんか?

反論にあって論点がズレた場合の2つの対処法

そんなときどうしたら良いでしょう。まず、ポイントは次の2つ。

1)反論の言葉に食いつかないこと。

2)伝えたかったことを何度でも繰り返すこと。

相手は痛いところを突かれたと感じると、自己防衛から激しく反論をしてきます。これ、本能です。反論をすることが悪いとかいうことではなくて、ついつい反論したくなるものなのです。まずここを押さえましょう。

ここで「自分が悪いのに、反論するとは何事か!謙虚さが足りない!」と思ってしまうと、反論するとは何事か!論議になってしまいますから気をつけましょう。今、大切なのは、亀山君に資料を早く仕上げてもらい、課内で確認・修正するということです。

そこに意識を集中させましょう。

「その話は後でじっくり話をするとして、いま私はあなたにXXしてほしいということを話しているのです」

「それはそうかも知れませんが、いまはXXということについて話をしています」

そんなふうに、伝えたいことを繰り返し、論点をずらさないことに意識を向けましょう。

相手の反論に、ついつい話の目的はなにかを忘れがちですが、「亀山君に資料を早く仕上げてもらい、課内で確認・修正する」ということをめざして、そこはきっちりクリアする。

これができると、懸案事項がひとつずつ片付いていきます。気持ちの上のお荷物をその都度下ろして、着実に前に進んでいきましょう。

相手のペースに飲まれて言いたいことが全然伝わらないときの対処法について書いています。こちらも合わせてお読みください。

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産業医として、伝え方コーチとして、毎日たくさんの方の話を聞いてきた経験を元に、「自分が疲れない話の聞き方のポイント」についてまとめた本です。
相手の役に立ち、親身に寄り添うことで、温かい関係性を作りながらも自分が疲れずに関わっていくためのコツが書かれています。
特に、身につけるスキルよりも、手放すとうまくいく考え方に多くのページを割いて、わかりやすい事例とともに解説しました。

この記事を書いた人

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本間 季里

産業医、伝え方コーチ、ストレングス・コーチ

大学卒業後、小児科医・免疫学の基礎研究者を経て、2017年より、世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかで、それでも妥協点を見つけて協調していくための伝え方を提案し、個人と組織の両方にアプローチできる産業医・伝え方コーチとして活動中。

セッション数は7年間でのべ3000回以上、これまで300名を超える方々に伝え方の講座や研修を提供し、満足度が90%以上です。

資格:医師・医学博士・日本医師会認定産業医
NPO法人アサーティブジャパン会員トレーナー

Gallup認定ストレングス・コーチ

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