気力を支えるのも体力:運動の効用をホルモンの観点から考えてみる

あるクライアントが、この一年くらい近くのスポーツクラブに通ってジョギングをしていると話してくれました。その方は運動とは程遠い印象だったので驚きました。

こんにちは。産業医・伝え方コーチの本間季里です。世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかでも協調していくための伝え方をご提案します。「頭でわかった」ではなく、実際にやれることを目指します。

気力を支えるのも体力

その方は筋肉量を増やしたいという目標があるわけでもなく、健康維持のために運動を続けているらしい。あるときセッションの中で「運動はしばらく続けます。気力を支えるのも体力ですからね」とつぶやきました。

おお〜!!何という名言!そうなんですよ。当然ですが私達は人間ですから、体調・感情の波があります。だから、同じことをするにも、いつもより気力が必要なときもあるし、新しいこと・未経験のことをするには気力が必要ですよね。

その気力の土台を作っているのが体力なら、やはり体力をつけておくことはすべての基礎になるということですよね。

ただね、この体力なんですが、最近は運動が気分に大きく影響を与えていくということが科学的にもわかってきているようなんです。

運動の観点から採用で体育会系が好まれる理由2つ

産業医として人事担当者と話をしていると、しばしば「だから体育会系の人が良いのよね」という言葉が出てきます。「へ?今どき体育会系かどうかなんてまだ言ってんの?」とずっと感じていました。が、体育会系を運動習慣がある人と置き換えると抵抗感はありません。理由は2つ。

1つめは、運動習慣があるのでセロトニンが分泌しやすい。ウォーキングを20分ほどするとセロトニンというホルモンが分泌されることがわかっています。セロトニンは幸せホルモンとして有名で、気分を安定させると言われています。ウォーキングが勧められる理由は筋力アップだけじゃないんですね。

2つめは、ストレスホルモンと言われているコルチゾールの分泌が抑えられるということです。コルチゾールはストレスを感じると分泌されます。運動は一種のストレスなのでコルチゾールが上昇します。運動を中止すると運動前のレベルに下がっていく。

運動を習慣的に行っていると、運動したときのコルチゾールの分泌量は増えにくくなります。そしてここが大切なのですが、他のストレスを抱えているときでもコルチゾールの上昇は同様に抑えられるということがわかってきています。運動が、あなたの体のストレス反応を抑制するようにコントロールしてくれるのですね。

体育会系の人はストレスに強いということを、これまでは「つらいことを乗り越えてきたという経験からくる自己効力感」「くよくよ考えるより体力にものをいわせてとにかく動く」というような説明がされてきましたが、これらホルモンの動きも影響しているかもしれません。

ワンルームマンションでリモート勤務だと気分が沈むんです

コロナ禍が始まって世の中が一斉にリモート勤務に突入した当初、「ワンルームマンションでリモート勤務だと気分が沈むんです」という相談をよく受けました。特に若い層で多かった気がします。

実際、その状況が長く続き休職するくらいまで気分が沈んでしまったという話も聞きました。どうしても気持ちが沈むという場合は、感染に気をつけて出社して仕事しましょうという対策を取ったこともあります。幸いなことに、大半が外に出ないという状況でしたので、通勤電車もオフィスも人が少なかったのが幸いしました。

これも体を動かす機会が激減したということに起因していたのかもしれませんね。

私自身も自宅のリフォームをしてから2年。庭も家の中も、隅々まで動けるようになりました(←って、前の家はどんなだったんだ!)。それまでは二拠点生活が長かったので、自宅ももちろんですが二拠点目のこじんまりした賃貸の部屋でも生活していました。

リフォームが完了し賃貸の部屋を解約して生活の拠点が一つになってからしみじみ感じることがあります。気持ちが前向き、安定している気がするのです。気持ちがどんより、くよくよというのが少なくなったような。

もちろん、快適な居住空間。庭も樹木でジャングル状態だった以前に比べて、スッキリ見通しも良くなったので快適。リフォームを機に不要なものを一気になくしたので広々している、などいろいろと理由はあると思うのですが、一つの理由は家の中で過ごしているときもよく歩き回るということです。狭い賃貸の部屋では数歩歩くと何でも手が届くという状態でしたが、今はそれではことが進みません。

そうすると以前に比べてちょっとした意欲が湧いてくることが多くなってきました。気分も明らかに上向き。運動までいかなくても、体を動かす機会を増やしていくということ自体、気分の安定や前向きな気持ちには重要なポイントなんだなと感じます。

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キンドル出版しました

産業医として、伝え方コーチとして、毎日たくさんの方の話を聞いてきた経験を元に、「自分が疲れない話の聞き方のポイント」についてまとめた本です。
相手の役に立ち、親身に寄り添うことで、温かい関係性を作りながらも自分が疲れずに関わっていくためのコツが書かれています。
特に、身につけるスキルよりも、手放すとうまくいく考え方に多くのページを割いて、わかりやすい事例とともに解説しました。

この記事を書いた人

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本間 季里

産業医、伝え方コーチ、ストレングス・コーチ

大学卒業後、小児科医・免疫学の基礎研究者を経て、2017年より、世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかで、それでも妥協点を見つけて協調していくための伝え方を提案し、個人と組織の両方にアプローチできる産業医・伝え方コーチとして活動中。

セッション数は7年間でのべ3000回以上、これまで300名を超える方々に伝え方の講座や研修を提供し、満足度が90%以上です。

資格:医師・医学博士・日本医師会認定産業医
NPO法人アサーティブジャパン会員トレーナー

Gallup認定ストレングス・コーチ

詳しくはこちらのプロフィールをご覧ください。