多様性は隣の人の好き嫌い、

Diveresity&Inclusion・・・ダイバーシティ&インクルージョン

ある程度の企業であれば多様性に向けた取り組みを求められる時代になりました。それはそれで良い方向性、あるべき方向性だなと思います。

会社としてはわかりやすい例をあげて取り組みを内外に知らせていく義務もありますしね。性別、人種、出身地などの誰もが理解しやすい指標で多様性を示していくのも当然と言っちゃあ当然です。

でもね、私たち一人ひとりの個人レベルの場合、この基準をダイバーシティ&インクルージョンだと思う必要なんてないと思うんです。

こんにちは。産業医・伝え方コーチの本間季里です。世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかでも協調していくための伝え方をご提案します。「頭でわかった」ではなく、実際にやれることを目指します。

個人の立場での多様性

大木さん(仮名)は日本人で日本の東京都で生まれ、45歳の男性です。高校卒業後に警視庁に入り、交番勤務から刑事になって今は本庁の組織犯罪対策部の巡査部長。一方の小松さん(仮名)も日本人で日本の東京都で生まれ、45歳の男性です。高校卒業後に警視庁に入り、交番勤務から刑事になって今は本庁の組織犯罪対策部の巡査部長。

二人は性別も国籍も年齢も学歴も仕事も階級も経歴も今の職場も全く同じ。では両者に多様性はないんだろうか?大木さんは、名字に「大」とついているのに背が低く小柄です。だから瞬発力に定評がある。カラオケが好きで好きな酒は芋焼酎です。一方の小松さんは、名字に「小」とついているのに背が高く大柄です。だからか、馬力には定評がある。手品が上手で好きな酒は意外にもワインです。

このように個人レベルでは十分に一人ひとりが多様性があるんです。多様性の最も小さな単位は好き嫌いだよ、といつも考えています。多様性ってそもそもそういうことなんじゃないのかな。

●辛いものが好き、辛いものは嫌い。

●パクチーが大好き、パクチーなんて大嫌い。

あなたはあなたのまわりの人のそういう好き嫌い、多様性を「へえ、そうなんだ。おいしいのにな」と思いながらも尊重している。でも、その範囲では「へえ、そうなんだ」と何の違和感もなく受け入れられる多様性を、どんどん外側に広げていくと、どこかで必ず躓く境界がある。

●ある人は男性と女性という境界かもしれない。

●ある人は出身地という境界かもしれない。

●ある人は肌の色という境界かもしれない。

そしてその違和感を感じるポイントが、あなたが今受容できる多様性の範囲を示す境界なのです。あなたのその境界は日々常に変わっていく。広がったり狭まったり・・・なにかの体験、経験、情報などによって。私たち個人レベルでの多様性の捉え方ってそういうことだと思うんです。

と、ここまで読んできて、あなたは「それだったら、一人ひとりの存在そのものが好き嫌いという多様性に満ちているんだから、取締役は男性だけだって問題ないんじゃないの?」と思ったかもしれません。

断固、否!なんですね。

組織の観点から見た多様性

なぜかと言うと、その人の背景が同じだと、ついつい似たり寄ったりの考え方をするものだからです。「男性、日本人、大企業の一社のみで一筋、高学歴、既婚、妻は専業主婦、残業をいとわず働く」と聞いただけで、どんなことが好きでどんな考え方をしてどんな政党を支持しているかまで、薄っすらと想像できちゃいませんか?

組織運営の上ではそれはリスクになるのです。ものごとの一面しか見ずに判断してしまうことになるからです。あなたの組織で働く人も、組織に明らかにしているかしていないかは別にして、ほんとうは多様な集団のはず。

それを無視して「均一な組織」と誤解して均一な価値観の元に運営をしていくと、必ずモチベーションが下がる人が出てくる。例えば24時間働ける男性を想定している組織では、24時間働ける男性以外のメンバーがモチベーション低下に陥る。それは組織のリスクになる。

あなたの組織には顧客がいるはず。顧客には2種類あって、目の前の相対している顧客とその向こうにたくさんいる、眼の前にはいない顧客。あなたの前にいようといまいと、その顧客は多様なはず。その多様な顧客の存在を意識しないで事を進めてしまうことは組織のリスクになる。

ではそのリスクを回避するために最も簡単な方法が、多様なバックグラウンドを持った従業員を採用し、自由に発言してもらうということなのではないでしょうか。

例えば以前こんなことがありました。足が不自由で車椅子を使って仕事をしている人と話をしたときのこと。「課長はコピーを100セットね、と簡単に言うけどねぇ」と愚痴るので、「いまのコピー機ってそんなの簡単にセットできるじゃない?」と返事しました。

すると、「車椅子に乗っていると、そのセットをするための液晶パネルが見えないのよ。あれ、上向きになっているからね」言われなきゃわからない、気づかないことってたくさんあるんですよね。だからこそ、それぞれの人がただ自分の視点で見えるものを言って、360度の方向から一つのことを吟味できたとしたら、商品にせよ、映像にせよ、作品にせよ、資料にせよ、それは練り上げられたものとなるでしょう。

メンバーが多様だというだけでは足りない

ここで大切なのは、人を揃えているだけじゃない。実際に発言をしていくこと。そういう環境があることなんですよね。そしてそういうことができるのが、結果的に強い組織と言えますよね。

危機に陥ったとき、皆が似たような反応・考え方しかできなかったら、それが状況に合っていなかったらあっという間に組織は倒れます。人類に免疫システムの多様性がなかったら、ここまで生き残り発展はしてこなかったでしょう。

繰り返し起こったパンデミックの歴史のなかで全滅してしまったはずだからです。しかし、どんなパンデミックのときも、必ず最小限の影響しか受けず生き残った人がいました。免疫システムに多様性があったからです。

この視点の多様性を担保するために絶対に必要なのがバックグラウンドの多様性。だから企業は様々なバックグラウンドの人を集めようとしているわけです。単に「SDG’sに取り組んでいます!」「多様性に取り組んでいます!」という話ではないんですよね。

そして、そこは個人レベルでの多様性とは意味が違います。あなたは個人レベル、組織レベルそれぞれの多様性の意味と必要性をどのように捉えていますか?

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この記事を書いた人

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本間 季里

産業医、伝え方コーチ、ストレングス・コーチ

大学卒業後、小児科医・免疫学の基礎研究者を経て、2017年より、世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかで、それでも妥協点を見つけて協調していくための伝え方を提案し、個人と組織の両方にアプローチできる産業医・伝え方コーチとして活動中。

セッション数は7年間でのべ3000回以上、これまで300名を超える方々に伝え方の講座や研修を提供し、満足度が90%以上です。

資格:医師・医学博士・日本医師会認定産業医
NPO法人アサーティブジャパン会員トレーナー

Gallup認定ストレングス・コーチ

詳しくはこちらのプロフィールをご覧ください。