ねぎらいと声掛け:特に意識したい見過ごされがちな人たち

産業医・伝え方コーチの本間季里です。

あるとき、部下を十数人持つ管理職のクライアント(仮に風間課長としましょう)から

「私の部下の亀山さん(仮名)は、よく遅刻はするわ、ミスは多いわ、資料作成を指せると誤字脱字は多いんです。

亀山さんのフォローで他のことが全然できなくて・・・」という相談を受けました。

あなたの周りでも同じようなこと起きていませんか?

見過ごされがちな人たち

(私)「他の部下の方たちのことはどうなっていますか?」
(風間課長)「そりゃもう、それぞれ自分でなんとかやってもらっています」
(私)「声を掛けるとか、雑談をするということは?」
(風間課長)「ないですね。彼らは自走できる人たちなんで。安心です


「自分でなんとかやれる人たち」「自走できる人たち」「安心できる人たち」

これは風間課長の、彼らに対する信頼の証です。

でもちょっと待ってください。

彼らは風間課長が亀山さんの指導や管理にほとんどかかりきりのときにも、文句も言わずに遅刻はせず、締切を守り、そこそこのレベルの資料を作り、ミスは少ない。

なにより、問題が起きそうになると早めに報告をしてくれるので早めに対処ができる。

つい放ったらかしに

もちろん、彼らは褒められたいからそうしているわけではない。

それが自分の常識だから行動しているだけ。

だからといってねぎらいの言葉一つなく、放ったらかしでいいのでしょうか?

誰にも感情はある

彼らにも感情はあります。

風間課長が亀山さんにかかりきりなのを横目で見て、ふと 「常識の範囲内でちゃんとやっていると放ったらかしでどんどん仕事が増え、ちょっと問題があるとあれだけ手をかけ、業務調整をしてもらえるんだ・・・」と思っても不思議ではないでしょう。

実際、私自身にも同じような経験があります。

そして今、産業医として同じ言葉を聞くことがあります。

ねぎらいの言葉を

風間課長が亀山さん以外の部下のことを 「自分でなんとかやれる人たち」「自走できる人たち」「安心できる人たち」というのは、信頼の証であるとともに、自分の手抜きを正当化しているのではないでしょうか。

特別に言葉をかけたりフォローをしなくても黙々と働いている人たちは、残念なことに上司にとって透明人間のような存在になってしまいがちです。

そのような人たちに感謝をしていないかといえば、風間課長は心のなかで深く感謝していることでしょう。

でもその感謝の気持ちは、言葉にして伝えなければなかったも同じ。

ぜひ、言葉にしましょう。

大げさに感謝の言葉を言わなくてもいいんです。

  • いつもの資料を提出してくれたときに「いつも助かっているよ」
  • 会議のリマインドをしてくれた部下に「いつもリマインドありがとう。忘れるところだった」

職場だけではない

実は同じことは職場だけでなく家庭でも起きています。

  • いつも家事をするのが当たり前になっているパートナー。
  • 勉強も部活動もがんばっている子ども。
  • 細々と日常のことに気を配ってくれる両親。

いかがですか?

ねぎらいの言葉を期待しているわけはないからこそ、気持ちは言葉にして伝えましょう。

この記事を書いた人

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本間 季里

産業医、伝え方コーチ、ストレングス・コーチ

大学卒業後、小児科医・免疫学の基礎研究者を経て、2017年より、世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかで、それでも妥協点を見つけて協調していくための伝え方を提案し、個人と組織の両方にアプローチできる産業医・伝え方コーチとして活動中。

セッション数は7年間でのべ3000回以上、これまで300名を超える方々に伝え方の講座や研修を提供し、満足度が90%以上です。

資格:医師・医学博士・日本医師会認定産業医
NPO法人アサーティブジャパン会員トレーナー

Gallup認定ストレングス・コーチ

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