「私にできるのでしょうか?」できるんですよ、なぜならば

先日の面談で、こんな相談を受けました。

「課長にならないか、と打診されたんです。でも私に、できるのでしょうか?」

桜井さん(仮名)は、まじめで丁寧な仕事をする方です。周りからの信頼も厚い。でもご本人は「今の課長がやっていることを見ていると、とても自分には無理だと思うんです」とうつむいたまま。

あなたにも、覚えがありませんか? 新しい役割を前にして、「私には荷が重い」と思ったこと。

「能力があるからそのポジションにいる」は、実は逆

私たちはつい、こう思い込んでいます。能力があるからそのポジションに就ける、と。
だから、今の自分と目の前のポジションを見比べて、「足りない」と結論を出してしまう。

でも実際は、逆なんですよね。

そのポジションになったから、能力が身につくのです。

考えてみてください。今の課長さんだって、課長になる前から課長の仕事ができたわけではありません。課長になってから、課長の仕事を覚えたのです。私が知る限り、例外はほとんどありません。

心理学に**「インポスター症候群」**という言葉があります。十分な実績があるのに「自分はそれに値しない、まぐれで今の立場にいるだけだ」と感じてしまう心の状態のことです。昇進を打診された人の多くが、程度の差はあれこれを味わいます。つまり、その不安は「実力不足の証拠」ではなく、むしろ真面目な人ほど通る道なんですね。

外側からの推測は、別の世界からの推測

もうひとつ、大事なことがあります。
そのポジションに就いてみないと、どんなサポートがあるのか、どんな情報が入ってくるのか、わからないということ。

課長になると、それまで見えなかった資料が回ってきます。相談できる相手が変わります。部長が何を考えているかを聞ける場に、自分が座っている。判断に必要な材料が、向こうから入ってくるようになるのです。
ところが私たちは、今の自分の持ち駒だけを数えて「できるかどうか」を計算してしまう。これでは答えが出るはずがありません。

外側から推測するのは、違う世界のことを推測しているようなものなんです。地図を持たずに「あの山は登れるか」と考えているのと同じ。登り口に立てば、道標も、先に登った人も、休憩所も見えてくるのに。

私も「できるのでしょうか」と思っていました

かく言う私も、初めて企業研修の講師を頼まれたとき、まったく同じことを思いました。「私にできるのでしょうか?」
引き受けてみたら、事務局の方が会場を整えてくださって、参加者アンケートというフィードバックまでもらえて、次はこうしようと考える材料が向こうからやってきました。やってみて初めて、自分が一人でやるわけではないと知ったのです。

もちろん最初はうまくいかないこともありました。今も修正中です・・・。それでも、あのとき断っていたら、その修正すら始まらなかったわけです。

迷ったら、「今の自分」で決めない

もしあなたが今、新しい役割を前にして立ちすくんでいるなら、判断の基準をひとつだけ変えてみてください。
「今の自分にできるか」ではなく、「そこに行ったら何が見えそうか」で考えてみる。

そして、もう一歩だけ踏み込めるなら、すでにその立場にいる人に聞いてみるのもいいかもしれません。「なってみて、思っていたのと違ったことは何ですか?」と。きっと、外からは見えなかった景色の話が出てきますよ。

できるのでしょうか、ではなく、やってみたら何が見えるでしょうか。
その問いに変えるだけで、気持ちが少しだけ軽くなるかもしれません。

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この記事を書いた人

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本間 季里

少人数の会社でも産業医が必要な理由
産業医・伝え方コーチ:本間季里

「社員一人ひとりが健康的に働き、会社が成長していける職場を目指したい」という理念のもと、心身の健康を支える産業医です。

少人数の職場では、産業医のサポートによる健康管理や職場環境の改善が会社の成長に直結します。そこで、従業員50人未満の会社の産業医業務に特に力を入れています。

私の産業医としての強みは、傾聴、質問、わかりやすいアドバイス、的確な判断の4つのアプローチを組み合わせ、経営者と社員の支援を行っています。10年以上の経験を持ち、日立製作所、長崎大学など、幅広い業種で産業医を務めてきました。

企業規模に関わらず、経営者が経営に専念でき、社員が心身ともに健康で働ける職場の実現を目指します。

資格:日本医師会認定産業医・医学博士
アサーティブジャパン会員トレーナー
コーチングプラットフォーム認定コーチ
Gallup社認定ストレングス・コーチ

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