【産業医が教える】その「けど」、前半は届いていません

先日の産業医面談で、経理課の米沢さん(仮名)がぽつりとこう言いました。
「月次の締め、一度も遅らせたことがないんです。でも角田課長からは『まあ堅実だよね。ただ、もう少し全体を見てほしいかな』って。……あれ、私、褒められてるんでしょうか?」

「褒められてるんでしょうか?」と聞き返したくなる時点で、褒められた実感はゼロなんですよね。

「けど」の後ろだけが、心に残る

人は、最後に聞いた言葉ほど強く印象に残ります。これを心理学では「新近効果」と呼びます。直前に受け取った情報のほうが記憶に残りやすい、という心の働きです。

だから「よくやってるけど、もう一歩」と言われると、頭の中に居座るのは「もう一歩」だけ。「よくやってる」のほうは、ただの前置きとして流れていってしまう。
しかも「けど」は、前半を打ち消すための接続詞です。言った本人は足し算のつもりでも、受け取る側には引き算として届いているんですね。

課長は、ちゃんと評価していた

後日、角田課長ご本人と話す機会がありました。開口一番、「米沢さんは信頼してますよ。数字を任せられる人です。だからこそ、次のステージに行ってほしくて」。

そう、評価していないどころか、期待していたのです。

ところが、評価と期待をひとつの文に詰め込んでしまった。その結果、届いたのはダメ出しの部分だけでした。こういうすれ違い、本当にたくさん見かけます。

一文に、ひとつの気持ち

コツは、たったこれだけです。切り分けて、二回に分けて伝える。

まず、評価だけを言い切る。
「毎月きっちり締めてくれて、本当に助かってる。ありがとう」

ここで一度、句点を打ちます。相手が受け取る時間をつくる。一呼吸おく。

そのうえで、期待を別の文として渡す。
「その上で相談なんだけど、来期は部門全体の数字も一緒に見てもらえないかな。米沢さんならできると思ってるんだ」

あなたが誰かを認めた言葉、その後ろに「けど」がついていませんでしたか?今日ねぎらう場面があったら、そこで一度、句点を打ってみてくださいね。

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この記事を書いた人

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本間 季里

少人数の会社でも産業医が必要な理由
産業医・伝え方コーチ:本間季里

「社員一人ひとりが健康的に働き、会社が成長していける職場を目指したい」という理念のもと、心身の健康を支える産業医です。

少人数の職場では、産業医のサポートによる健康管理や職場環境の改善が会社の成長に直結します。そこで、従業員50人未満の会社の産業医業務に特に力を入れています。

私の産業医としての強みは、傾聴、質問、わかりやすいアドバイス、的確な判断の4つのアプローチを組み合わせ、経営者と社員の支援を行っています。10年以上の経験を持ち、日立製作所、長崎大学など、幅広い業種で産業医を務めてきました。

企業規模に関わらず、経営者が経営に専念でき、社員が心身ともに健康で働ける職場の実現を目指します。

資格:日本医師会認定産業医・医学博士
アサーティブジャパン会員トレーナー
コーチングプラットフォーム認定コーチ
Gallup社認定ストレングス・コーチ

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