コミュニケーションにおける追い風と向かい風

陸上競技を見ていると、少しの向かい風でも記録が大きく変わります。長距離走の場合ですと、大きく体力を消耗したりするのがよく伝わってきます。

一方で、風向きが追い風だと記録が大幅に良くなったり、体力の消耗を防げます。

これを見ていると、人のコミュニケーションも同じだなと感じます。

こんにちは。産業医・伝え方コーチの本間季里です。世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかでも協調していくための伝え方をご提案します。「頭でわかった」ではなく、実際にやれることを目指します。

コミュニケーションにおける向かい風と追い風

まず、コミュニケーションにおける向かい風、追い風とは何でしょうか?

SNSでネガティブなコメントが少しでもつくと、本当にへこみます。たった一人だとしても、面と向かって批判をされると落ち込みます。そういうものですよね。

いま、「たった一人だったとしても」と書きましたが、そもそも「批判をしているのはたったひとりだけ」と確信することすら難しくなります。ときには、批判をしているのはたった一人なのに、「全世界の人が批判をしている」ような気持ちになりがち。

このように、コミュニケーションにおける向かい風は、批判・非難・陰口などです。

一方で、コミュニケーションでの追い風は、称賛・承認・ポジティブなフィードバックなどでしょうか。SNSで言うと、いいね!やシェアもありますね。

人はどちらに敏感かと言ったら、もちろん前者の向かい風の方です。なぜかと言ったら、人は目の前の人が敵か味方か、瞬時に判断する必要があったからです。自分自身を、そして自分が属している集団を守るために、自分たちに対して良くない気持ちを抱いている個人や集団を素早く見極める必要があったからです。

この本能は、太古の昔からのもの。江戸時代とか室町時代なんてものじゃなくて、それこそ人が人として出現した縄文時代やそのもっと昔から。

向かい風を敏感にキャッチしたとき

SNSへの投稿がバズったとか、発言が炎上した等の場合は別ですが、私たちの身の回りには良いことも良くないことも同じようにランダムに起きているもの。でも、私たちは本能的に良くないことにアンテナが立っているので、批判や陰口などを敏感にキャッチしてしまいます。

そんなとき、まず思い出したいのは「人は向かい風を敏感にキャッチするもの」ということ。

実は一つの批判の裏には、その何十倍もの同意や称賛があるのです。そして、私たちは通常、称賛や承認をあまり強く主張したりしません。心のなかで「良いな」と思っていることがほとんどです。

そうすると私たちに届くのはたった一つの批判だけ。その裏にある何十倍もの承認・称賛は届きません。届かなかったことは私たちにとっては「なかったも同じこと」になってしまいます。

向かい風に打ちひしがれているあなたは「人は向かい風を敏感にキャッチするもの。その裏には声には出さねど、同意してくれている人がたくさんいる」と自分の考えを修正していくことが必要です。

一方で、向かい風で打ちひしがれている人を目の前にしたときには「気にすることないよ」ではなく、明確に自分の同意する気持ち、承認を伝えるようにしましょう。その際、大切なのは具体的にどこがどんな風に良いと思うのかを伝えることです。

追い風(ポジティブ)と向かい風(ネガティブ)の割合は3:1

打ちひしがれた人を目の前にして承認の言葉を伝えるのも大切です。でもできれば相手が向かい風に打ちひしがれる前に、自分の意見として良いと思っている点を相手に伝えられるといいですね。

追い風(ポジティブなこと)と向かい風(ネガティブなこと)の割合は、3:1くらいが良いと言われています。

この世の中にネガティブなことがゼロというわけにはいきませんし、ゼロだったらむしろ私たちは居心地の悪さを感じるのではないでしょうか?

自然に任せているとネガティブなことばかりに目が行きがちな私たち。ポジティブなできごととネガティブなできごとのバランスがちょうどよく、私たちが「良いことがあった」と前向きな気持になれるのがこの3:1のバランスだというのです。

そのために私達にできることは何でしょう?

当事者としては、ネガティブなことを言う人もいるけれどポジティブな反応をしてくれる人もいる、ということを忘れず意識するということ。ポジティブなことも同時に起きているという考えを忘れないことです。でも、時にはそれは難しいことでもある。

だからこそ、常に周囲の人にポジティブなことを伝える習慣をもてると言いですよね。今まで心のなかで「良いな」と思っていたけれども口にすることもなかったことを、あえてお互いに「言葉にして伝える」ということです。

「へえ、いいね、それ」

「それ、面白いね。いつもそういうことを思いつくのはあなたの強みだよね」

「いつもていねいな資料作りだよね。あなたに任せていると安心です」

「あなたはいつも笑顔なので、あなたがいると会議が前向きになるよね」

などなど、たとえ小さなことであっても言葉にして伝えるということが、相手にとっては追い風になるのです。

人は例え小さなものであっても向かい風は暴風のように感じるもの。一方で、追い風は風速ほどには強く感じないものです。

追い風も向かい風も、必要以上に強く感じたり過小評価したりすることなく、吹いている風速通りに感じられるように、私達にできることをしていきませんか?

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この記事を書いた人

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本間 季里

産業医、伝え方コーチ、ストレングス・コーチ

大学卒業後、小児科医・免疫学の基礎研究者を経て、2017年より、世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかで、それでも妥協点を見つけて協調していくための伝え方を提案し、個人と組織の両方にアプローチできる産業医・伝え方コーチとして活動中。

セッション数は7年間でのべ3000回以上、これまで300名を超える方々に伝え方の講座や研修を提供し、満足度が90%以上です。

資格:医師・医学博士・日本医師会認定産業医
NPO法人アサーティブジャパン会員トレーナー

Gallup認定ストレングス・コーチ

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