相手の話を聴くことが大切なたった1つの理由

「相手に何をどう伝えるかよりも大切なことは、相手の話を聴くことです」

相手の話を聴く大切さはだいぶ前から言われています。会社の研修などで誰でも一度は、いえ、何度も聴いたことがあるでしょう。

ところが、未だに管理職という「部下の話を聴く立場」の方から、

「聴くのが大事ってのはわかりますよ。だけど、それより大事なのは問題解決じゃないですか?仕事ってそういうもんでしょう。解決もしないで、ただ話を聴くだけって、意味あるんですかね。」と言われます。

最近は減ってはきましたが、鼻でせせら笑われることもあります。

こんにちは。産業医・伝え方コーチの本間季里です。世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかでも協調していくための伝え方をご提案します。「頭でわかった」ではなく、実際にやれることを目指します。

大人こそ、相手の話を聴くことがたいせつな理由

実はこれは、多くの人が感じている疑問ではないかと推察します。特にこの国で育って教育を受けていると、なかなか話を聴くという体験を積む機会がありません。

小学校では「相手の話を聴きましょう」ということはあるように思います。しかし、それはただ黙って相手が話し終わるのを待つだけなので、その間に「自分は次はこのことを言うぞ!」と頭の中は自分が次に話すことでいっぱい。これは傾聴というより単なる「くちチャック」ですよね。

中学校以降はどうなんでしょう?「相手の話を聴きましょう」という言葉は小さな子どもに言うものであって、大人にわざわざ言うものではないという思い込みがあるのかな?それとも、大人は黙っていても「相手の話を聴けている」とでも思っているのかな?

おとなこそ、相手の話を聴くためのトレーニングを欠かさないことが大切です。

おとなになるに連れ、視野や考え方が広がっていきます。当然、考え方や利害関係が複雑になり、対立することも増えていきます。それでも、相手を一人の人間として尊重しながら、建設的にことを運ばなければならない場面も多くなりますよね。そのときに、すべての土台を固めるのが「相手の話を聴くこと」です。

相手の話を黙って聴くことが難しい理由

あなたは本当に黙って相手の話を聴けますか?冒頭の管理職のように、解決策を提示しなければならないという落ち着かない気持ちになりませんか?

「聴いただけで何もしていない、何も解決策を提示していない」という後ろめたさ、落ち着かなさをしばしば感じるのではないでしょうか。

例えば、筋力が弱って足元がおぼつかない高齢者がなかなか椅子から立ち上がれずにいるのを黙って見守っているときの、居心地の悪さに似ています。手伝ってしまうのは簡単。でもそれだと本当は高齢者自身のためにはならない。じっと見守る。

子どもが上っ張りのボタンをかけるのに手間取っている。親の自分がやってあげれば簡単。でもそれでは子ども自身のためにならない。じっと見守る。

このとき、自分で自分にツッコミが入るのです。「冷たいんじゃないか?」「周囲から私のことを冷たい奴と誤解されていないかな」

もう、周囲に人でもいようものなら、ほとんどの人がさっさと手を出してしまう人のではないでしょうか?「だって、いつまでもモタモタやっていたら、周囲に迷惑かかるし・・・」と心のなかで言いながら。

迷惑?誰に?もしかしたら、それ、自分のためではないですか?

部下の話を黙って聴いているときにも、多くの人は同様の居心地の悪さを感じているはず。「管理職は解決方法を教えてなんぼじゃないのか?」「ただ黙って聴いているなんて、部下から『この上司は解決方法も知らないのかよ』と誤解されるんじゃないか?自分は解決策は知っているのに!」

そんな心の葛藤を感じていませんか?

そう、相手の話を黙って聴くことが難しい理由の一つが、この自分自身の葛藤をうまく整理できていないことなのです。

話を聴いているときに相手の脳内で起きていること

基本的に、解決策は上司から与えるよりも、部下自身が見出すもの。そうすることで部下自身の成長と自信に繋がります。部下の解決策はあなたとは違う方法かもしれません。「こういうやり方もあったんだな」と気づき、それによってあなたの視点・視野もまた広がります。

話を聴くというのは単にその言葉通りに「何も提案せず、ただ話を聴いている」ように外からは見えるでしょう。

でも、実際には部下である相手は言葉を発し、話しながら、頭の中で目まぐるしく思考がめぐっているのです。その思考を巡らせ、整理するのを手伝っているのが、傾聴をしているあなた。簡単な相づちと、ちょっとした質問を挟むだけで、部下の思考は加速されます。

部下が自立して動いてくれるようになるためには、あなた自身が相手の話を聴くときに感じる、この後ろめたさ、居心地の悪さを乗り越えていく必要があります。

「話して頭が整理された」という経験、ありますよね。部下からこの言葉が出てきたら、しめたもの!部下は自分で、考える→行動する→結果を検証する、のサイクルを踏み出します。あなたは、折々で相談にのる、承認するを繰り返すだけ。

今一度、相手の話を聴くということを考えてみませんか?

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産業医・伝え方改善コーチ・本間季里のメールマガジン

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特に、身につけるスキルよりも、手放すとうまくいく考え方に多くのページを割いて、わかりやすい事例とともに解説しました。

この記事を書いた人

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本間 季里

産業医、伝え方コーチ、ストレングス・コーチ

大学卒業後、小児科医・免疫学の基礎研究者を経て、2017年より、世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかで、それでも妥協点を見つけて協調していくための伝え方を提案し、個人と組織の両方にアプローチできる産業医・伝え方コーチとして活動中。

セッション数は7年間でのべ3000回以上、これまで300名を超える方々に伝え方の講座や研修を提供し、満足度が90%以上です。

資格:医師・医学博士・日本医師会認定産業医
NPO法人アサーティブジャパン会員トレーナー

Gallup認定ストレングス・コーチ

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