職場で長期のお休みの人が出たとき、産業医は色々な立場の人とお話をします。体調を崩した当人はもちろん、職場の上司、人事労務の人たちです。
たくさんの経験の中で、強く感じたこと。それは、体調を崩して長期のお休みに入った当人にはすでに、主治医を始めとしたサポートが入っている一方で、残った職場の人には何のサポートも入っていないということです。
こんにちは。産業医・伝え方コーチの本間季里です。世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかでも協調していくための伝え方をご提案します。「頭でわかった」ではなく、実際にやれることを目指します。
残った職場メンバーの業務負荷が高まる
どういうことかと言いますと、長期のお休みに入った人が受け持っていた業務を止めるわけにはいきませんから、当然残った人たちに振り分けていきます。残った人たちもそれまで自分が抱えていた仕事があるでしょうから、そこにやり慣れない業務が重なるわけです。
今までの経緯を知り、その上でスムーズに仕事を進めるには、当初は相当なエネルギーが必要になります。滑車を回すためのチカラは回し始めが一番大変、ということと同じです。回り始めればそれほどチカラはいりませんが、そこまでが最も大変なのです。
残った職場メンバーは、状況をたいてい理解しています。自分たちが協力しなくてはならない、自分たちが頑張らなくてはならない、そのことは十分わかっている。大抵の職場メンバーはそう考えています。
それでも、大変なものは大変なんです。
上司の関わり一つで職場は変わる
そこで重要なのは上司の関わりです。ポイントはつぎの2つです。
1)どうしても長期の休みに入った人にばかり意識が向きがちになります。上にも書きましたが、体調を崩して長期のお休みに入った人にはすでに、主治医を始めとしたサポートが入っていることがほとんど。休んでいる当人にばかり意識が向かないように意識をしましょう。
2)残ったメンバーの踏ん張りにいつもより目を向けて、ねぎらいの言葉、承認の言葉を今まで以上にかけるようにしてください。職場メンバーは状況を理解し、頑張らなければならないことを理解しています。それでもつらくなるのは「それが当たり前」という空気になったとき。
そういうときに上司から「更に忙しくなっただろうに、きれいな資料をいつもありがとう」「忙しくても、期限を守ってくれて本当に助かっているよ」などと声がかかると嬉しいものです。もちろん「仕事なんだから当たり前」ではあっても、それをちゃんと見てくれているという思いが苦労を癒やしてくれるのです。
あなたのねぎらいの言葉は相手に伝わっていますか?
という話をすると「いつもねぎらっていますよ」という言葉が返ってくることがあります。
そのあなたのねぎらいは、職場メンバーに伝わっているでしょうか?あなたはねぎらっているつもりでも、相手が「労われている」と感じなければ、それは言わなかったと同じこと。
「いつもねぎらっていますよ」は、あなたの言い分。そこで済ませずに「相手にわかるように」何度でも伝えましょう。相手に意図通りに伝わってはじめてコミュニケーションが成立するのです。
何も言わなくても頑張ってくれている職場メンバーに、いつも以上のねぎらいと承認を意識してみてください。「ちゃんと見ていてくれる」という思いが、苦しい状況を乗り越える原動力になることでしょう。