怒りをぶつけられたとき

怒りなどの強い感情を相手からぶつけられたとき、どういう対応をしていますか?

こんにちは。産業医・伝え方コーチの本間季里です。限りあるあなたのエネルギーを本当に大切なことに使うためのコツをお伝えしています。中心はコミュニケーションや上手な時間管理・習慣化。

特にコミュニケーションでは、世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴うなかでも協調していくための伝え方のコツをご提案しています。「頭でわかった」ではなく、実際に身につき日常で使えることを目指します。

怒りは不安感や自己防衛からのこともある

「メンタルヘルス不調者が出ない特効薬を知っているんなら教えて下さいよ!」

ある日のミーティングで参加者からから怒りをぶつけられました。その部署では立て続けにメンタルヘルス不調による休職者がでており、その日は職場のヒアリングのための時間でした。

産業医から話を聞きたいと言われただけで身構える人はたくさんいます。何を言われるのだろう、という不安感、「きっと、あれがだめだこれがだめだと追及されるに違いない」とミーティングが始まる前から防衛的になっていることもあります。

不安感や防衛的な感情が、怒りという形で表面に出てくる場合はたくさんあります。怒りは自分の身を守る最も簡単な方法。動物が敵を前に威嚇のポーズを取るのと同じです。人間も動物ですものね。

あなたもこのときの私のように、突然怒りをぶつけられた経験はありませんか?あるいは、自分自身がこの参加者みたいに怒りの反応をしてしまったことも・・・

怒りをぶつけられたら、まずは黙って最後まで聞く

こんなとき、相手の怒りや不機嫌という感情的な態度に誘発されて、なんとかその場を抑えなくちゃと焦ってしまいがちですよね。そうすると、意図せずに相手のペースに巻き込まれてしまいます。当初の、職場の情報を得て、なんとか職場や従業員のためになる関わりをしたいという目的は果たせず、話の内容はぜんぜん違う方向ヘ行きかねません。おまけに、後味の悪い、苦い思いを味わうことになってしまいます。

私自身、前職ではずっとそんなことの繰り返しでした。その結果、仕事が手につかず上の空になり、へとへとになって帰宅したあとも布団をかぶって現実逃避・・・どれだけ長い間、そんなことを繰り返していたでしょうか?

でも怒りの感情についてよく知るようになり、段々と相手の怒りに飲み込まれずに対応できるようになりました。それは、自分の怒りの感情にも対応できるようになるということでもあります。これはトレーニングで上達できるんですよ。

怒りの感情の裏にある気持ちを考えてみる

怒りの感情は二次感情と呼ばれるものです。その手前に、一次感情という別の感情があります。

例えば、入院している患者の家族が、しばしば病院の対応が悪いと怒って文句を言う場合があります。怒っているという怒りにばかり目が行くと、なんとか怒りをなだめようとしてしまいます。でも、その奥にある一次感情はなにかを考えてみましょう。

ある家族は「患者である家族が今後どうなるのか不安で不安で仕方がない」ということかもしれません。

別の家族は「自分の大切な家族がなにか軽く扱われているようだ。こんなことが続くと病状に変化があって本当に頼りにしなくてはならないときに、安心しておまかせできるのだろうか?」ということかもしれません。

安易に「あの入院患者の家族は厄介よね」というところで留めずに、もう一歩踏み込んで怒りの奥にある気持ちを考えてみませんか?怒りの手前の一次感情に目を向けることで、相手の怒りの感情に飲み込まれずに対応できていきます。

自分たちの気持ちを理解してくれた、と相手が思えば、怒りをぶつけた、ぶつけられたという一見トラブルを、今後の信頼関係に変えていくことも可能になります。

落ち着いて、別の機会を待つ

冒頭のミーティング参加者に怒鳴られたときの私の対応はどうしたかって?

今日のミーティングの目的をもう一度話し、しばし沈黙の時間を取ってから「う〜ん、困りました・・・・こういう状況では建設的で良い話ができないと思うので、また別の機会にお時間を頂戴したほうが良さそうです

とお断りしました。

1)私は話を聞きたいだけなのだということを伝え、

2)困っているという気持ちを伝え、そして、

3)別の機会にしましょう、今は無理しないほうが良さそうです、なぜならあなたが感情的になっているから、ということを伝えました。

大切な話をしたいときに望ましい状況が作れないなら、別の機会にしましょうとはっきりと伝えることも、時には大切です。

怒っているとかいないとか、そんなことに時間を使うのは無駄です。怒っているのは相手なので、怒りについては相手に考えてもらうことも、時にはあっても良いのではと考えています。

まとめ

相手の怒り、不安などの感情に不用意に巻き込まれないこと。時には寄り添うのも良いかもしれません。ただし、寄り添うのと巻き込まれるのは違います。相手を必死になだめようとしているなら、それは巻き込まれていること。

静かに毅然と目的を伝え、そして自分の提案をします。冒頭の件は結局どうなったと思いますか?徐々に相手の怒りがトーンダウンし、結局、良いミーティングができました。相手がどこまで納得していたかはわかりませんが、それで良かったと思っています。

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この記事を書いた人

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本間 季里

産業医、伝え方コーチ、ストレングス・コーチ

大学卒業後、小児科医・免疫学の基礎研究者を経て、2017年より、世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかで、それでも妥協点を見つけて協調していくための伝え方を提案し、個人と組織の両方にアプローチできる産業医・伝え方コーチとして活動中。

セッション数は7年間でのべ3000回以上、これまで300名を超える方々に伝え方の講座や研修を提供し、満足度が90%以上です。

資格:医師・医学博士・日本医師会認定産業医
NPO法人アサーティブジャパン会員トレーナー

Gallup認定ストレングス・コーチ

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