不安の仕組み:脳は「いつもと同じ」を死守しようとする。

人はどうやって、人生の選択をしたり、違う道を選んだりするんだろうか?

こんにちは。産業医・伝え方コーチの本間季里です。限りあるエネルギーを本当に大切なことに使うためのコツをお伝えしています。中心はコミュニケーションや上手な時間管理・習慣化。

特にコミュニケーションでは、世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴うなかでも協調していくための伝え方のコツをご提案しています。「頭でわかった」ではなく、実際に身につき日常で使えることを目指します。

「先生のこと、聞いてもいいですか?」

産業医面談中に、「いつも私の話を聴いてくれてありがたいんですが、先生のこと、聞いてもいいですか?」としばしば聞かれます。

多いときには週に2回も聞かれて「どないしたん?」と首を傾げたこともありました。どうやら相当長く働いているのはわかるけれど、自分の目の前に座って話を聴くようになるまでにどういう人生を歩んできたのか、興味をそそられるみたい。

そういう人は大抵、ご自分が人生の岐路に立っているのですよね。自分が迷い、不安に押しつぶされそうになり、決められずにいる。一つを選ぶことが怖い。

他の人はそんなとき、どうやって選択するのだろう?確信を持って決断できたのだろうか?

だから目の前にいる私にまず話を聞きたいということらしい。

3度の転職経験

私は小児科医としてキャリアをスタートさせました。小児科医になって3年目に、基礎研究って面白いな、と思いましたが、実際に基礎研究への転向を決断できず、10年悩みました。10年悩んで、やっと免疫学の基礎研究の研究室へ転職しました。これが一回目の転職。

たいていこの時点で「10年も悩むかよ!」という顔をされてしまいます。まあ、そうですよね。自分でもそう思います。

二度目の転機は、研究の世界で十分成果を出せるようになったころ。仕事で信じられないほど低い評価を受けて、数年立ち直れずにいたあとのことです。

「悩むのはわかるよ。でも、種類の違うことをごっちゃにして悩んでいるような気がする。一度カテゴリー別に整理してみたらどう?」この友人のアドバイスに従って、ひと晩かけてこれまでやってきたことを棚卸し。そして自分にとって好きなこと、やりやすいこと、しんどくても喜びを感じながらできること、苦手なこと、苦痛なこと、できれば避けたいことなどに分類してみました。

すると・・・辞めるか今の道で上を目指すかの二者択一しかなかった私の中に、第3の道が見えたのです。

その2ヶ月後に、まさに第3の道で想定していたポストへの異動の話がきました。すぐに異動して自分の居場所を変えてみました。

その頃には、自分の興味のままにコミュニケーションのセミナーを受けたり、クリフトン・ストレングス®の勉強をしたりしていました。

だからその先は、

「医師コミュニケーションクリフトン・ストレングス®」

という掛け算で考えて、産業医、組織研修、個人向け伝え方コーチというキーワードが浮かび上がりました。「そして今あなたの目の前に座っているというわけです」

本当に知りたいことは?

そこでめでたしめでたしなんですが・・・

さて、実はここからが彼らが本当に聞きたいこと。不安だったのか?不安とどう向き合ったのか?

実は平気で、確信を持って次の人生を選択できる人はいないと思うのです。

なぜ10年も決断できなかったのか?というところでは私は少し悩みすぎ。しかし、「わたしにできるのだろうか?」と不安だったからでもあります。

その後だって、転職サイトに登録するだけでも手が震え、最後の登録ボタンを押すのに3週間もかかった。

転職の面談前にはビビりまくって眠れなくなった。

自分の選択は間違っているのではないかと考えすぎて吐き気がした。

今持っていることばかりに目が行き、それを手放すのは愚かなのではないかと動揺した。

不安なのは、脳が変化を嫌う仕組みだから

だれでも程度の差はあれ、同じです。なぜなら脳の仕組みが変化を望まないようにできているから。

転職だとか、離婚するだとか、今までうまくいかないなと思っている人とのコミュニケーションを変えてみるとか、どんなことであれ、今までのやり方を変えるのは脳が抵抗します。

昨日までと同じという省エネモードからギアチェンジしなくてはならないからです。同じを前提としている脳にとっては負荷が高まる。

だから不安になる。

この仕組みを知っていると、不安になったときに受け止めやすくなります。

理論や知識だけでは行動できるようにはなりません。頭でっかちで何ができる!というのは一面の真実です。

でも情報・知識を得ることで私たちが自分を理解し、行動に移す助けにはなります。

なにか新しいことをしようとして不安に駆られ、不安感から止めてしまおうと思っているあなた、脳が変化しないことを望んでストップをかけようとしているのか、本当に進まないほうが良いというサインなのか、立ち止まってしっかりと考えてみませんか?

伝え方に興味がある方はぜひ、ご登録ください。読むだけで、伝え方に関する視点が増え、知らず知らずのうちにあなたの伝え方が変わっていきます。

産業医・伝え方改善コーチ・本間季里のメールマガジン

キンドル出版しました

産業医として、伝え方コーチとして、毎日たくさんの方の話を聞いてきた経験を元に、「自分が疲れない話の聞き方のポイント」についてまとめた本です。
相手の役に立ち、親身に寄り添うことで、温かい関係性を作りながらも自分が疲れずに関わっていくためのコツが書かれています。
特に、身につけるスキルよりも、手放すとうまくいく考え方に多くのページを割いて、わかりやすい事例とともに解説しました。

この記事を書いた人

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本間 季里

産業医、伝え方コーチ、ストレングス・コーチ

大学卒業後、小児科医・免疫学の基礎研究者を経て、2017年より、世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかで、それでも妥協点を見つけて協調していくための伝え方を提案し、個人と組織の両方にアプローチできる産業医・伝え方コーチとして活動中。

セッション数は7年間でのべ3000回以上、これまで300名を超える方々に伝え方の講座や研修を提供し、満足度が90%以上です。

資格:医師・医学博士・日本医師会認定産業医
NPO法人アサーティブジャパン会員トレーナー

Gallup認定ストレングス・コーチ

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