草の根の謝罪

以前、仕事でアメリカ東海岸に2年ほど住んでいました。その2年の間に、飛行機で偶然隣になった人や、車の修理のためにレッカー移動を依頼した時等、何度もアメリカ人から「あなたは中国人か、韓国人か、それとも日本人か」と聞かれました。私が「日本人です。」と答えると、3回ほどしみじみとそのアメリカ人が私に話しかけてきたことがありました。

彼らは全く関連のない別々の機会に私と話したのですが、彼らに共通していたのは「実際に日本を知るようになってから、これまで教えられてきた日本に対する価値観が大きく変わった」ということでした。

車の修理工のアメリカ人は沖縄の米軍基地に派遣されていたということでした。彼はすぐに日本が好きになり、休みの度に日本中を旅して歩いたそうです。彼にとって日本で過ごした期間は、とても良い思い出になっているようでした。彼は「だから、私はアメリカ軍兵士が日本で度々事件を起こしていることを残念に思っているし、日本人に対して大変申し訳ない気持ちで一杯だ。申し訳ない。」と話していました。

飛行機の中で隣になったアメリカ人は、「自分はずっとアメリカで教育を受けてきた。アメリカでは『原爆は戦争を早く終わらせるために必要で、実際にそれで戦争は終結した。』と教わり、私もそのことに疑問を持たなかった。しかし、大人になってから日本に行く機会があり、広島や長崎に行き、原爆によって何が起きたのかを知った。何が起きたのか、アメリカの学校では教えてくれず、私は何が起きていたのかを長い間知らなかったことを悔やんだが、だからこそ教育の大切さ、ということをその時知った。教育はとても大切ですね。」と一所懸命に話していました。

私は実はアメリカで原爆がどのように教えられているのか、その時初めて知りましたが、見ず知らずの日本人である私に熱心に話す彼らの姿はとても印象的でした。彼らは私を通して日本人全体をみているようで、「謝罪」と「教育を通じて真実を教えていく重要性」を伝えたいようでした。

私は彼らとの語らいの中で、「国家」としてのアメリカと「個人の集団」としてのアメリカの両方を感じとる重要性を知りました。草の根の交流とよく言われる「個人レベルでの分かち合い」「個人レベルでの理解」を積み重ねていくことは小さな歩みではありますが、ひとつひとつ紡いだ絆は国家間の繋がりより余程強固であり、揺るぎないものではないかと思うのです。

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この記事を書いた人

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本間 季里

産業医、伝え方コーチ、ストレングス・コーチ

大学卒業後、小児科医・免疫学の基礎研究者を経て、2017年より、世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかで、それでも妥協点を見つけて協調していくための伝え方を提案し、個人と組織の両方にアプローチできる産業医・伝え方コーチとして活動中。

セッション数は7年間でのべ3000回以上、これまで300名を超える方々に伝え方の講座や研修を提供し、満足度が90%以上です。

資格:医師・医学博士・日本医師会認定産業医
NPO法人アサーティブジャパン会員トレーナー

Gallup認定ストレングス・コーチ

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