タイミングを外すと反省の心はどこへやら

休み明けの朝一番で、産業医をしている会社から私の携帯にメッセージが入った。こういうことは非常に珍しい。ということは逆にそれほどの件だということだ。急いでメッセージを見た。

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亀山さん行方不明事件

私が面談を担当している50歳代の従業員(仮に亀山さんとしましょう)が無断欠勤をしたので連絡を取ろうとしたが連絡が取れない。この方独居。↓

安否確認のために上司が自宅に行ったが応答がない。↓

緊急連絡先の家族に連絡を取るがこちらも応答なし。↓

仕方がないので上司と人事が相談の上、警察官立ち会いのもと鍵を開けて室内に入ったが、携帯も置いたままで本人がいない。↓

現在安否確認のために警察に捜索願を出して捜索中とのこと。

う〜む、こりゃ大変だ。こちらの心配をよそに、結局2日後に、ビジネスホテルでのんびり温泉に入っていた亀山さんを警察が発見。 

当の亀山さんは「なんの騒ぎ?」とぽっか〜んとしていたそうな。もちろんその2日間も無断欠勤が続いていたんですけれどね。ぽっか〜んとしている場合じゃないよな。

殊勝に反省をしていた亀山さん

 

今日話したいのは亀山さんの無断欠勤の警察出動騒ぎじゃないんです。その後日談・・・

亀山さんは発見翌日から出勤しました。当然ですが、上司には事情を聞かれるわ、人事からはお叱りを受けるわ、人事が会社に報告をしなくてはいけないので、何度も人事から事情聴取?ヒアリングを受けるわ、ということでした。 

ま、仕方ないですね。私の方にもなんと人事から何故かきつい口調でお説教が・・・

「亀山さんに甘いこと言わないでくださいね!」甘いことって何?と聞くと、「過ぎたことは仕方ないよね。もう忘れてこれから頑張ろう、みたいなこと言われちゃ困るんです!会社としては規則違反の大変なことなので! 

それで、何回かの人事のヒアリングのあと、「反省文を出して、会社からの処分を待つように」ということだったらしいです 

いや、今この文章読んで「厳しい会社!」と思ったあなた!もしあなたがそう思ったなら、それはあなたの認識が甘いです。会社は従業員に対する安全配慮義務があります。安全の基本の基本は命です。だから安否を確認するし、安否が確認できないときには確認できるまで動きます。 

で、ここから先が本題です。 

待てど暮らせど処分がないと・・・

「反省文を出して、会社からの処分を待つように」と言われた亀山さん。産業医面談のたびに「で、処分は決まった?」と聞きましたが、半年経っても処分の話はなし。私は産業医として甘いことをいう気はありませんでしたが、人事といっしょになって本人を責めるつもりもありませんでした。

「無事で良かった」「心配しましたよ」という気持ちは伝えましたが、あとは「やっぱり会社の就業規則に違反はしたので、その責任はちゃんと取らないとね。」ということで、本人もそのつもりになっていました。

なのに・・・いつまで経っても処分の音沙汰なし。

人が反省するにはタイミングがあります。 

何度も何度も、事情を聞かれ、その都度反省するように言われ、ずっと殊勝に反省していたんですよ。ところが、ずっと音沙汰がないうちに、「なんだよ」という気持ちになってくるものです。どんなに良い人だって・・・ 

結局なんの音沙汰もないまま処分の話は立ち消えに。処分をするにも手続きが面倒くさいとか、色々と人事には人事の理由はあったんだろうと思います。

でも、「処分があるぞ」と言った以上、面倒くさくても、速やかに処分しないと、反省はどこにやら、ということになりかねません。幸い、亀山さんはその後、一度も無断欠勤することもなく定年を迎えました。

言ったことは守る。もし、その後方針を変えたならその説明をする。どちらかですよね。なし崩しが一番まずい。 

会社の場合でも親子の場合でも、教師と生徒の場合でも、同じではないでしょうか?そんなことを感じた亀山事件でした。

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この記事を書いた人

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本間 季里

産業医、伝え方コーチ、ストレングス・コーチ

大学卒業後、小児科医・免疫学の基礎研究者を経て、2017年より、世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかで、それでも妥協点を見つけて協調していくための伝え方を提案し、個人と組織の両方にアプローチできる産業医・伝え方コーチとして活動中。

セッション数は7年間でのべ3000回以上、これまで300名を超える方々に伝え方の講座や研修を提供し、満足度が90%以上です。

資格:医師・医学博士・日本医師会認定産業医
NPO法人アサーティブジャパン会員トレーナー

Gallup認定ストレングス・コーチ

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