麦わら帽子:家族の気持ちを優しく受け取っていますか?

産業医・伝え方コーチの本間季里です。

気持ちよく好意を受け取っていますか?

簡単なことなら好意は気持ちよく受け取ろう。特に身近な家族などの言葉なら・・・という話。

ちょっとしたアドバイス、心配する言葉をかけられるときってありますよね。何でもかんでも「ありがとうございます」と受け取る必要はないけれど、逆になんでもかんでも「クソバイス!」と言って撃退するものでもない。バランスが大事ですよね。

家族の何気ない会話をちゃんと受け取っていますか?

家族の何気ない会話って流されがち。

例えばこんなことありませんか?

息子・娘が久しぶりに帰省した。楽しい時間はあっと言う間に過ぎて、それぞれの自宅に帰る時間になった。

「体には気をつけるのよ」

「車の運転は怖いからね。事故らないように注意しなさいよ」

あまりにも何気ない会話すぎて

「いつもいつもおんなじこと。もう大人なんだから、大丈夫だってば」

あなたもあまりにも何気なくそんな言葉を返してしまう。

両親もこの言葉を聞いて、激しくショックを受けるということはないでしょう。でも、もう少しお互いにホッとできる会話ができればいいですよね。

お互いにホッとできる会話とは?

父「体には気をつけて」

あなた「そうだね。気をつけないとね(気をつけるね)」

母「車の運転は怖いからね。事故らないように注意しなさいよ」

あなた「そうだね。注意しないとね(注意するね)」

あまり中身がある会話ではありませんが、それでも心配して娘・息子に声を掛ける親の言葉を「大丈夫だってば!」というよりは、「そうだね。そうするね」という言葉を返したほうが、互いにホッとするものです。それは、父や母の言葉を一旦受け止めてから優しくボールを返すことになるからです。

麦わら帽子

私にはほろ苦い思い出があります。

私は2017年に母を看取ったあと、父とののんびりした生活を1年半ほど送って、父を看取りました。父と私は互いに踏み込まない、適度な距離のある関係でした。

もうじき夏という頃。私が熱く強い日差しの下で庭の雑草をせっせと取っていたとき、父が庭に面した部屋のサッシをガラガラと開けて、「ほい、これ。日差しがきついから」と麦わら帽子を差し出してきました。

私は雑草取りに集中していたので、「いいよ、いらない。大丈夫」と、無下に言葉を返したのでした。虫に刺されるのも嫌だという私が、暑い中せっせと雑草取りをしている。父にはもう少し元気だった頃には自分がやっていたのに、今はそれができなくなっているという、申し訳ない気持ちもあったのではないでしょうか。

母が愛用していた麦わら帽子を差し出した父のちょっぴり切ない気持ちを汲むことなく、「いいよ、いらない」と言ってしまった。父が亡くなってもう5年も経ちます。でも、今頃になって、ちょっぴり胸の痛みとともによく思い出します。

父は自分の優しさを受け取ってもらえない寂しさを感じたのではなかろうか。そんなことを考えては後悔の気持ちと、切ない思いを噛み締めます。

ズケズケと自分の領域に踏み込まれるなど、身近な関係は難しい部分もたくさんあります。でもついつい「大丈夫だってば」と言ってしまうような何気ない会話のとき、「そうだね、そうするね」とそっと受け取ってみませんか?

この記事を書いた人

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本間 季里

少人数の会社でも産業医が必要な理由
産業医・伝え方コーチ:本間季里

「社員一人ひとりが健康的に働き、会社が成長していける職場を目指したい」という理念のもと、心身の健康を支える産業医です。

少人数の職場では、産業医のサポートによる健康管理や職場環境の改善が会社の成長に直結します。そこで、従業員50人未満の会社の産業医業務に特に力を入れています。

私の産業医としての強みは、傾聴、質問、わかりやすいアドバイス、的確な判断の4つのアプローチを組み合わせ、経営者と社員の支援を行っています。10年以上の経験を持ち、日立製作所、長崎大学など、幅広い業種で産業医を務めてきました。

企業規模に関わらず、経営者が経営に専念でき、社員が心身ともに健康で働ける職場の実現を目指します。

資格:日本医師会認定産業医・医学博士
アサーティブジャパン会員トレーナー
コーチングプラットフォーム認定コーチ
Gallup社認定ストレングス・コーチ

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