あなたのまわりに、「この人、誰に対しても態度が変わらないな」と思う人はいますか?
一方で、上司や大口の取引先の前ではにこやかなのに、後輩や下請けの方、清掃をしてくださる方には目も合わせない。残念ながらそういう方も、どの職場にもいるんですよね。
「下っ端」だった私に、話を聴きに来てくれた人
私にとって「誰に対しても態度が変わらない人」といえば、真っ先に浮かぶ顔があります。製薬会社の営業をされていた、三浦さん(仮名)です。
駆け出しの小児科医として大学病院にいた頃の話です。小児科は、内科や外科に比べると非常に小さな診療科でした。スタッフの数も、動かせる予算の桁も比べ物になりません。営業の方から見れば、効率を考えるなら大きな診療科を回るほうが断然良いわけです。
それでも三浦さんは、定期的に顔を出してくださいました。しかも新製品の説明よりも、「最近どうですか?」とこちらの近況を聴いていくことのほうが多かったのです。
当時の私は正真正銘の下っ端。下っ端の話を聴いたところで、何の得にもなりませんよね。それでもゆっくりと世間話を聴いて、しばらくしてから、ぽつりと教えてくれるのです。「新しい研究試薬が出ましたが、実験のお役に立つのでは?」「この製品ですが、容量は小さなものが発売されました。小児科の患者さんにどうかと思いまして」と。
聴く。それから、必要なものを渡す。この順番だったんですね。
営業職に「どうも!!うちの新製品のご紹介を・・・へへへ」というイメージを勝手に持っていた私は、それが180度ひっくり返りました。
三浦さんはその後、製薬会社の合併・吸収の波の中で早期退職されたと聞きました。それでも私は、名前も、あの聴き方も、まだ覚えているのです。
「効率」で相手を選ぶと、その計算は透けて見える
「この人に時間を使っても得にならない」という判断は、本人が思っている以上に相手に伝わります。話を聴く姿勢、視線、返事の速さ。そういうノンバーバル(言葉以外のサイン)は隠せないんです。
そして人は、自分がどう扱われたかを何年も覚えています。若手だった頃に軽んじられた記憶は、その人が決裁権を持つ立場になってもきれいに残っています。そして、ていねいに扱ってもらった記憶のほうも、同じだけ残るわけです。
用件がなくても、一分だけ
伝え方の研修でよくお伝えするのは、話す2割・聴く8割という配分です。
でも、いきなり8割は難しい。ですから、まずは相手を選ばないことから始めてみませんか?
明日、あなたがいちばん後回しにしがちな相手のところへ、用件なしで一分だけ立ち寄ってみる。「最近どうですか?」と聴いて、黙って最後まで聴く。それだけです。
何十年か経ったあと、誰かが誰かに「あの人だけは話を聴いてくれた」と話しているとしたら。その名前が、あなただったらうれしいですね。
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