こんにちは。ストレスマネジメント・コーチの本間季里です。コミュニケーションの方法を少し変えたり自分の強みを知り活かすことで、個人と組織の幸福度を高めるサポートをします。
「深夜食堂」というテレビドラマがあります。シーズン5まで続くドラマの他、映画も数本作られているので私同様ファンが多いのでしょう。ゴミゴミとした雑多な街の路地にあって、深夜から朝までやっている「めしや」に集まる常連客を中心にした人情物語です。人のちょっとした愚かさや、それ故の悲しさや可笑しさ、ほのぼのとした暖かさが私は好きなのですが、小林薫さん演じる、常連客がマスターと呼ぶ店主がとても良い味を出しています。
常連客が「マスター、聞いてよ〜」と言いながら自分の身に起きた不運を話している間、マスターは基本的には黙って話を聞いています。しかし、一言二言言葉をはさむとき、「そうかい、そりゃあ辛かったねぇ」「そうかい、それは悲しいねぇ」などのように相手の代わりにその人の感情を言葉にします。まるでそれが呼び水のように「そうなのよ〜」と言って相手の感情や本音がほとばしり出てきます。
このマスター、話を聴く姿勢ができているな〜、というのが人情話の次に私がこのドラマで注目している点です。人は案外自分の感情を適切な言葉にすることができません。事実を連綿と語ることは多くても、その時自分がどんな気持ちだったか、案外私達は言葉にする機会は少ないものです。それは事実こそが大事で、感情などという私的なものを相手に伝えることは良くないものだと刷り込まれていることも一因かもしれません。しかし、私達はその時の感情を適切に言語化しないと、言語化できなかった気持ちがオリのように沈み、感情が置き去りにされたことによるストレスが溜まっていきます。感情を言語化することはとても大切なことです。
マスターは相手がうまく言語化できない感情を、相手の代わりに言葉にすることによって相手の話をうまく引き出している。常連客は「聞いてもらった。マスター、ありがとう」という満足感が得られる。傾聴のお手本だな〜。
「それはつらかったですね」「その時、悔しかった?それともそのとおりだなと思った?」「ほんと、よく頑張ってきたよね〜」など、相手に代わって、相手の感情を言語化してみてください。それがきっかけとなってより深く相手の話が聴けるかもしれません。