こんにちは。ストレスマネジメント・コーチの本間季里です。コミュニケーションの方法を少し変えたり強みを知り活かすことで自分や相手への理解を深め、個人と組織の幸福度を高めるサポートをします。
ここ数年、多くの企業で取り入れられるようになったことに1 on 1があります。月一回、上司が部下と30分から1時間、時間をとって継続的に話す時間を取るというものです。私はこの流れは大変素晴らしいことだと感じています。なぜなら、この1 on 1はうまく運用すれば、上司と部下の関係性を劇的に変える強力なツールになりうると考えているからです。でも、実はまだまだ、この面談の時間を持つということを面倒くさいことを増やしやがって、と思っている組織、社員は多いものです。ここでの一手間がどんな副産物を生み出すか、明確にイメージできないからではないでしょうか?
今までだって、上司と部下が一対一で話すことはあったさ、と思ったあなた!それは評価面談や目標面談、業務上の伝達など上司から部下への一方向の会話、良い悪いの評価が入った時間ではありませんでしたか?
いや、わざわざ1 on 1なんて名前つけなくても、私は部下と雑談もたくさんしていたよ!と思ったあなた!部下よりも上司のあなたがたくさん喋って「それはさあ、お前の考えすぎだよ〜」「そんなのどこの夫婦にもある話だよ。うちなんかさあ、そんなこともしてくれないぜ〜」などと、説得モード、自分の世界へ引きずりモードになって、結局、部下は黙って苦笑いして(自分の話をするのを諦めて)、上司の雑談にお付き合いしているだけになっていませんか?
こういう無意識の会話では、上司部下関係は今までと同じように固定されたままです。1 on 1では基本的に話す内容は部下の話したいこと。上司は聞き役に徹します。これだけでも、初めのうちは部下も上司も初めての体験で狼狽えることが多いでしょう。特に上司は「ジャッジする(良し悪しを判断する)のが自分の仕事だ」くらいに思っている人が多いので、黙って聞くことがなかなかできません。ジャッジされると人は警戒心を持ち、心を開くことができなくなります。
そういう時は私は二つのことをお伝えします。第一に「まず、①へえ、②そうなんだね、③そう考えているんだね、の3つだけを発するようにして時間を過ごしてみてください。案外、相手が話をしてくれて時間が過ぎていくものだということを体験してみて」とお話しします。この言葉とその変化形を使うくらいでも、充分会話は進んでいくことを味わってもらいます。第二に、沈黙を恐れないことです。沈黙にも意味がある。その時間で双方が考えたこと、感じたことを噛み締め味わっているかもしれないからです。その時間が後々とても大切な時間だった、と感じることはよくあることです。また、その沈黙があるからこそ、次はどんな話をしようかな、と考えるようになるということもあります。その沈黙を、上司がせっせと埋めてしまっては変化のタネを潰してしまうようなもの。
段々とこの上司にこんな話もして良いんだ、聞いてもらえるんだ、という気持ちが芽生えていくと、上司と部下の関係性がゆっくりと変わっていきます。気さくに話をする事ができるようになると、次第に業務上で気になること、今後問題になるかもしれない種を早めに相談するということに結びついていくでしょう。組織にとって長い目で見ると、部下としてじっくりと話を聞いてもらう体験をした人が、後々、部下の話をじっくりと聞ける管理職となっていく。組織全体で見ると問題を早めに察知し、解決に乗り出すことができる、つまり組織のリスク管理のコストも下がっていくのではないかと私は期待しています。