こんにちは。産業医・伝え方コーチの本間季里です。
あなたは人の話を聞くときに、要約しながら聴く人ですか?もしそうなら、相手との話のズレに要注意です。あなたが要約した言葉と、その言葉から相手がイメージする意味が実際にはずれていることが多いからです。
あるフィードバック
何年も前、コーチングを勉強するため半年間コーチングスクールに通いました。最後の認定試験では、大勢の人が見ている前でコーチングのセッションを行い、フィードバックをもらいます。
いくつかフィードバックをもらったのですが、そのなかの一つが「相手の話をまとめようとしなくても良いんじゃない?要約する癖があるよね」
その言葉の意味が最近わかりかけてきました。って、わかるの遅すぎだろうよ!!と思われるかもしれませんが、頭でわかることと腹落ちすることは全く違うのだ。
要約上手は良いこと
これまでずっと、「ようやく上手は良いことである」という教育を受けてきました。
というより、心の奥底でずっと「相手の話を要約しちゃいけないのかな?それのどこが悪いのかな」という一抹の疑問がありました。
だって、これまで話を要約することを求められることはあっても、要約するなと言われることはありませんでしたから。
相手の話をさっと「こういうことですね」と理解するチカラを褒められることはあっても「それ、あかんで」と言われることもなかったのです。
要約する癖とは?
しかし、それは仕事によります。
それまでの私の仕事では相手の話を手際よく要約をして、ものごとを前に進めるのが役に立っていたかもしれません。
しかし、産業医・伝え方コーチというのは、まず相手の話をそのまま受け止めることから始まります。
クライアントさんが「話してよかった」「わかってもらえた」と感じることが大切。
コーチ仲間から「相手の悩みを相手の言葉そのままに受け止めてみたら?」と言われても、「わかってる。私はそれをずっとやっているよ」と思っていました。
でもある時、「相手の話を一旦、あなたの中に落とし込んで思考して、あなたがこういうことだなと思ったことをあなたの言葉で『こういうことですね』と言っていませんか」と言われてやっと意味がわかりました。
そして、そのときに思い出したのが、冒頭のコーチングスクールの認定試験のフィードバックでした。
要約してズレる会話
冒頭の認定試験では、クライアント役を引き受けてくれた先輩コーチのガチの悩みをテーマにコーチングセッションをしました。
クライアント役のコーチの話を要約して、私が「こんなことですか?」と要約して質問しても、「う〜ん、それとちょっと違う気がする。」という言葉の応酬となり、次第に先輩コーチのテンションが下がっていくのが手にとるようにわかりました。
この先輩コーチと同じような「う〜ん、それはちょっと違う気がする」ということは、私も日常的によく経験します。
あれが全部、話をまとめてしまうことによる自分の解釈と、相手の感じていることのギャップだったんだ、ということに気づきました。
要約が効果的なときと無意味なとき
要約することが必要なときもあります。
でも、相手の話を聴くときには、変に相手の話を要約して自分の言葉で「こういうことですね」と言わず、相手の言葉そのままに受け止めてみる、ということも大切なんですね。
なぜなら、言葉とは人によって微妙に意味するところが違っているもの。
さらに私の中に一旦落とし込んで「こういうことだな」と要約して、それを私の言葉で相手に返したら、何重にもちょっとしたズレが重なってしまいます。
相手にとっては「わかってもらえてないなあ」ということになりかねません。
要約することで気づきが得られることもある。
でも、要約せずに相手の言葉そのままに受け取ることで会話が加速する場合もある。
自分の中で両方を使い分けられることが大切なんですね。