上司は別に強くなくたっていい

こんにちは。産業医・伝え方コーチの本間季里です。世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかで、それでも妥協点を見つけて協調していくための伝え方をご提案します。「頭でわかった」ではなく、実際にやれるまでしっかり寄り添います。

「上司たるもの、弱音を吐いてはいけない。だって、上司が弱音を吐いたら部下はもっと不安になるでしょう」

ある管理職の方とお話していたときの言葉です。その管理職の方が手掛けていたプロジェクトは大炎上中で、作業工程はかなり前から大幅に遅延していました。誰に聞いても大変な状況なのに、彼は長い間、歯を食いしばって弱音を吐かずに頑張ってきました。あるときのセッションで彼が言ったのが冒頭の言葉です。

こうやって歯を食いしばっていると、知らず知らずのうちに私たちは口数が少なくなります。周囲とのコミュニケーションを避け、目線は手元の書類ばかり見ているようになります。

これは人としては当然の反応で、自分を強いプレッシャーから守る、いわゆる自己防衛の一つ。でも、プレッシャーから多少は身を守れるかもしれませんが、こういう振る舞いをしていると、当然ですが周囲から孤立してしまいます。自分ではそのつもりがないのに、周囲の人を遠ざけることになってしまいますよね。

それはどうしてでしょうか?上司と部下の間に見えない溝ができてしまうから。

部下は仕事の状況が大変厳しいことをたいてい理解しています。「弱音を吐いても当然なのに、上司は弱音の一つも吐かない・・・鋼のメンタルだ・・・こうでないと管理職にはなれないのか。自分には無理だ。」

すなわち、「上司が弱音を吐いたら部下はもっと不安になるでしょう」どころか、「上司が弱音の一つも吐かなければ、部下は別の意味で不安になるでしょう」ということです。

部下からは上司が恐ろしく強い人に見えて、上司と部下の間に見えない溝ができます。本当はこの難局をともに乗り切りたい、その気持ちは上司も部下も同じはずなのに。上司はちっとも強い人なんかじゃなくて、必死に歯を食いしばっているだけなのに。

こんなとき、ギリギリまで我慢せずに、部下にサラッと弱音を吐いてみましょう。たとえば「先の見通しが立たないって本当に苦しいものだね。皆はどうやって気分転換しているのかな?」

鋼のメンタルを持った恐ろしいまでに強く見えた上司が、自分と同じ弱さを持った人間に見えた瞬間、人は心を開き距離が近くなり、ともに苦境を乗り越えようという気持ちになる。

時には自分から弱音を吐くことで伝わることもたくさんあります。

伝え方に興味がある方はぜひ、ご登録ください。読むだけで、伝え方に関する視点が増え、知らず知らずのうちにあなたの伝え方が変わっていきます。

産業医・伝え方改善コーチ・本間季里のメールマガジン

キンドル出版しました

産業医として、伝え方コーチとして、毎日たくさんの方の話を聞いてきた経験を元に、「自分が疲れない話の聞き方のポイント」についてまとめた本です。
相手の役に立ち、親身に寄り添うことで、温かい関係性を作りながらも自分が疲れずに関わっていくためのコツが書かれています。
特に、身につけるスキルよりも、手放すとうまくいく考え方に多くのページを割いて、わかりやすい事例とともに解説しました。

この記事を書いた人

アバター画像

本間 季里

産業医、伝え方コーチ、ストレングス・コーチ

大学卒業後、小児科医・免疫学の基礎研究者を経て、2017年より、世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかで、それでも妥協点を見つけて協調していくための伝え方を提案し、個人と組織の両方にアプローチできる産業医・伝え方コーチとして活動中。

セッション数は7年間でのべ3000回以上、これまで300名を超える方々に伝え方の講座や研修を提供し、満足度が90%以上です。

資格:医師・医学博士・日本医師会認定産業医
NPO法人アサーティブジャパン会員トレーナー

Gallup認定ストレングス・コーチ

詳しくはこちらのプロフィールをご覧ください。