フィードバックするときの2つのポイント

産業医の特徴として、その方の最も体調が悪いときが最初の出会いだったりします。充分休養をとったあとに同じ方と面談をすると、表情が全く異なることに驚くことが少なくありません。

そんなときには率直にありのままをお伝えします。

「本来はそういう表情の方なんですね。初めてお会いしたときは暗い表情でしたし、怒っているようにも見えました」

そうお伝えした小野さん(仮名)は面白そうに笑いました。当時は休職中で、今後の復職の目処も立っていませんでしたし、不安なことはたくさんあったはず。でも、「産業医と話をして長い間の肩の荷が下りました」と涙を流したときは大きな荷物を一人で抱えている感じでしたが、明るく朗らかな表情に変わっていたのです。

こんにちは。産業医・伝え方コーチの本間季里です。世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかで、それでも妥協点を見つけて協調していくための伝え方をご提案します。「頭でわかった」ではなく、実際にやれるまでしっかり寄り添います。

フィードバックは、相手にとって最適なタイミングで見えたままを言葉にして伝えること。

「初めてお会いしたときは暗い表情でしたし、怒っているようにも見えました」というのは私にとって小野さんの見えたままをお伝えした言葉です。

大切なのはタイミング。初めて産業医面談をしたときに「あなたは怒っているように見えますね」と言ったら、小野さんとの関係性は異なるものになっていたでしょう。怒っているように見える、というのは確かに見たままではあります。

でも、体調も悪い、どんな産業医なんだろうと不安な気持ちで初めての面談に臨んでいる、そんなときに「あなたは怒っているように見えますね」と言われたら、素直に受け取れたかどうかはわかりません。

当然だろう!と反発したかもしれない。この産業医はわかってくれない!と小野さんからレッテルを貼られてしまったかもしれない。

いずれにしても、その後の面談がスムースに運んだかどうか、はなはだ疑問です。

フィードバックをするときに大切なのは

1)フィードバックの内容が率直で正直であること

2)相手にとって最適なタイミングでフィードバックすること

この2つです。

率直さは無遠慮と紙一重の場合があります。また、適切なタイミングだったかどうかも相手の状況によります。

どうやって無遠慮ではなく率直に、最適なタイミングでフィードバックを伝えたら良いのかと言ったら、やはり、場数を踏むことでしょう。そして、相手からもフィードバックをもらうことです。

今のフィードバックを聞いてどう感じたか?

こまめに相手の感じ方を聞いてフィードバックを受けていくと、段々とタイミングや率直な伝え方などつかめるようになります。

フィードバックもコミュニケーションスキルの一つ。ならば、トレーニングで上達することができます。フィードバックは自分を鏡に写すようなもの。鏡を見なければ、今日の髪型・服装がどんなふうに見えているのか知ることはできません。

フィードバックをすることであなたが相手にとっての鏡になり、「他の人はどうかわからないが、私にはこんなふうに見えた」とフィードバックをしていきましょう。

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この記事を書いた人

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本間 季里

産業医、伝え方コーチ、ストレングス・コーチ

大学卒業後、小児科医・免疫学の基礎研究者を経て、2017年より、世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかで、それでも妥協点を見つけて協調していくための伝え方を提案し、個人と組織の両方にアプローチできる産業医・伝え方コーチとして活動中。

セッション数は7年間でのべ3000回以上、これまで300名を超える方々に伝え方の講座や研修を提供し、満足度が90%以上です。

資格:医師・医学博士・日本医師会認定産業医
NPO法人アサーティブジャパン会員トレーナー

Gallup認定ストレングス・コーチ

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