反応と対応:その場では思わず反応しても、人はその後の時間でじっくりと考え対応することもある

こんにちは。産業医・伝え方コーチの本間季里です。限りあるエネルギーを本当に大切なことに使うためのコツをお伝えしています。中心はコミュニケーションや上手な時間管理・習慣化。

特にコミュニケーションでは、世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴うなかでも協調していくための伝え方のコツをご提案しています。「頭でわかった」ではなく、実際に身につき日常で使えることを目指します。

スッキリと終わらない面談やセッション

産業医面談でもクライアントとの個別セッションでも、その場ではまとまる方向に行かずに、むしろカオスの(混乱した)まま終わることがあります。

あなたの職場の場合で言えば、上司や部下との面談でなんの結論も方向性も出ないまま尻切れトンボのままおわるとか、会議で紛糾したまま時間切れで終わるとか、そんなことでしょうか。

家族や友人関係なら、あなたが相談に乗ってアドバイスしても、今ひとつ相手の反応がないか、反発されるかで、そのまま物別れに終わって後味悪いな、という気持ちになるようなことです。

いずれもスッキリと終わるわけではないので、なにかもやもや感が残ります。

こじれた上司・部下関係

ある部署の若手社員、出雲さん(仮名)はおとなしく、ていねいな仕事をする人でした。だから他の人よりは仕事に時間はかかります。

上司の課長・益子さん(仮名)も部長の衣笠さん(仮名)も、男性ホルモン全開のような人たちで、バリバリと仕事をこなして夜中までの仕事も平気、どんどん仕事を片付けていくような人たち。当然、出雲さんの仕事のやり方とは大きく異なります。

益子課長も衣笠部長も、出雲さんに日々発破をかけ、時には「自分で考えろ」と突き放し、彼らなりの部下の育成?を行っていました。出雲さんは必死に彼らについていこうと頑張りましたが、2年目に体調を崩してしまいました。

その頃には、出雲さんは上司に対して信頼感を失っていました。

「どうせ、相談しても無駄」

「相談したところで何も変わらない」

「自分が駄目なんです」

一方の上司の益子課長も衣笠部長も、出雲さんに対して

「仕事ができない」

「それなのに文句が多い」

「手応えがなくて、わかっているのかいないのか分からなくて扱いづらい」

ここまで来るともう、上司と部下の関係はこじれてしまっています。

上司の反応

そこで産業医として、上司の方にもじっくりと話を聞いてみることにしました。しかし、面談に現れた彼らの表情はまず過度に緊張していて、自己防衛なのかあまり話が出てきません。状況を良くしようという気持ちは伝わって来ませんでした。

出雲さんが体調を崩しているので引き続き面談は続けていくことを話し、出雲さんの一番身近にいるので、上司として彼の体調にも気をつけてほしいこと、体調の変化があったら連携してほしいことなど伝えました。

すると、「わたしたちは医者じゃない。体調の変化などはわからない。そんなこと言われても困る」と二人が激しく抵抗しました。私とその場にいたスタッフはどういうところを見てもらいたいのか説明するのにかなり苦労しました。

こじれた上司・部下関係のその後の対応

出雲さんの上司との面談は、結局その場では何一つ実を結ぶこともなく終わりました。私は徒労感と無力感を感じました。

それから2ヶ月位経って社内で、管理職を中心にあるワークショップが開かれました。出雲さんの上司である益子課長も参加していました。ワークのときに小グループに分かれて討論をした時のことです。益子課長が他の管理職の人に「部下の体調面での変化を早めに知るために、どんなことに気をつけているか、ぜひ知りたい」と聞いていたそうです。

グループ内では他の参加者から、自分が気をつけていることや実例など、色々な取り組みを聞くことができたようでした。

私との面談の際には、あんなに緊張し抵抗していて話が進まなかったのに、そのあと色々と考えてくれたのですよね。

反応と対応

益子課長の例でもわかるように、ひとはその場では思わず反応をしてしまうもの。もちろん落ち着いてその場で対応できればそれに越したことはない。しかし、思わず反応をしてしまうことも多いはず。

話をしていて相手が反応をしたまま終わってしまうのは、「これでいいんだろうか?」と不安を掻き立てるもの。ついついもっと良い形で終わらせようとしたくなります。でも、反応してしまっている人を前に、いい方向に変えようとしても難しいものです。

むしろ、その場はサクッとと終わらせて、時間を置くのが良い場合も結構あります。益子課長のように・・・

人は後味が悪ければ悪いほどその後も色々考え続けます。その時間こそが大事なんですね。じっくりと繰り返し考えるうちに、ある出来事に反応するのではなく、対応するように考え方が変化していくことがあります。

必ずしもすべての場合に当てはまるわけではありませんが、あなた自身の反応と対応、そしてあいての反応と対応の力を信じてみませんか?

伝え方に興味がある方はぜひ、ご登録ください。読むだけで、伝え方に関する視点が増え、知らず知らずのうちにあなたの伝え方が変わっていきます。

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この記事を書いた人

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本間 季里

産業医、伝え方コーチ、ストレングス・コーチ

大学卒業後、小児科医・免疫学の基礎研究者を経て、2017年より、世代の違い・価値観の違い、利害の対立など、葛藤や緊張を伴う難しい関係性のなかで、それでも妥協点を見つけて協調していくための伝え方を提案し、個人と組織の両方にアプローチできる産業医・伝え方コーチとして活動中。

セッション数は7年間でのべ3000回以上、これまで300名を超える方々に伝え方の講座や研修を提供し、満足度が90%以上です。

資格:医師・医学博士・日本医師会認定産業医
NPO法人アサーティブジャパン会員トレーナー

Gallup認定ストレングス・コーチ

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