話しやすさは、話を始める前から決まっている

産業医・伝え方コーチの本間季里です。

産業医をしていると、上司の方から「部下が相談してくれない」「1on1でも、結局部下が仕事の話しかしないので、進捗確認になってしまう」というお悩みをよくお聞きします。

あなたはいかがですか?

部下の言い分

私は人事や総務の人間ではないので、ある管理職からそういう悩みを聞いたからと言って、その直接の部下からヒアリングするわけではありません。

ただ、多くの管理職と、部下の立場の人から管理職に対する不満を聞いていると、言い分には共通点があります。

部下の方の言い分はこんなところでしょうか。

「上司から『なにか困ったことがあればいつでも聞いて』って言われてましたけど、聞けませんでした。だって、いつもスケジュールは会議でびっしり詰まっているし、たまに出社のときに声かけても、PCいじりながら生返事で、話を聴く気があるのかな、って思っちゃって。それで、抱え込んじゃったのかな?」

上司の気持ちにも嘘はない

こういうお悩み、よくありますよね。

上司の方の「何かあったら相談して!」という言葉はその場限りのおべんちゃらなのでしょうか?私は決してそうは思いません。相談に乗ろうという気持ちは本当だと思うのです。話を聴こう、相談してほしい、きっとそう願っていたに違いありません。

でも、結果的に上司の思いは部下に伝わらず、部下の方は仕事を自分で抱え込んでしまって体調不良になってしまう。とても残念です。

話を聴くことの成否は、話が始まる前に決まっている

上司にできたことはどんなことだったのでしょうか?今後どのようなことに気をつけたら、相談しやすい状況を作り出せるでしょうか?

実は話を聴くことの成否は、話が始まる前にかなり決まってしまっています。これをセットアップといいます。

リアル、対面ならば、相手がこちらに近づいてくる段階で気づいて目を合わせ、柔和な表情で「どうした?なにか相談?」と上司の方から声をかけるといいですね。

きっと部下の方は、「声を掛ける前からわかってくれた。相談をすることもウェルカムらしい」というメッセージを受け取るに違いありません。

リモートならば、会話を始める前に一呼吸してください。明るい穏やかな声で第一声を始められるように。

なぜこのようなことが重要なのでしょうか?

メッセージの伝達方法は2種類

人間がメッセージを伝えるには、2つの方法があります。

1つ目は言葉。文字通り、話したり、文字を書いて伝えたり。

2つ目は文字以外のあなたの全てです。表情、声色、声の強さ、声のトーンの高低、言葉と言葉の間、姿勢、伝わってくる緊張感、穏やかさなど。

この1つ目の言葉と2つ目のそれ以外が一致しているとき、あなたは安心感を感じます。一方で、両者が不一致のとき、あなたはどう感じるでしょうか?

2種類のメッセージが不一致のとき

例えばよくこんな会話ありますよね。

「あの先輩、顔は笑っているけど、目は笑っていない」

あなたは全体が想定内だと調和を感じて安心する、不一致だと不安を感じる。

そう、不安を感じるのです。そして「どちらが本当なんだろうか?」と考えを巡らせる。

そして、90%強の人が、2つ目、すなわち言葉以外のメッセージを信じると言われています。これがメラビアンの法則と言われるものです。

言語情報と非言語情報の一致が、部下との関係性の土台を作る

思い出してください。「なんでも相談して」「わからないことがあったら何でも聞いて」

言葉ではそう言っていたかもしれません。しかし、あなたはどんな状況で、どんな表情、声色、声の強さ、声のトーンの高低、言葉と言葉の間、姿勢、緊張感で伝えていたでしょうか?

もうこの時点ですでに部下は「わからないことがあったら何でも相談して良いのかどうか?」判断しているのです。

そのような土台があったうえで、部下はあなたに近づいてくる。土台が固まっていない関係性ならば、部下は意を決して相談に来ているかもしれない。

だからこそ、リアル、対面ならば、相手がこちらに近づいてくる段階で気づいて目を合わせ、柔和な表情で「どうした?なにか相談?」と上司の方から声をかける

リモートならば、会話を始める前に一呼吸して、明るい穏やかな声で第一声を始めることが大切になってくるのです。

まとめ

言語情報と非言語情報は一致させ、相手に安心感を持ってもらう。そして、相談に来たときには、ウェルカムというメッセージを非言語情報で伝える。

一回やってみたら関係が変わりました!なんて言うものではない。でも、試みる価値はある。どうぞ、お試しあれ。

この繰り返しが「相談しやすさ」につながっていきます。

この記事を書いた人

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本間 季里

少人数の会社でも産業医が必要な理由
産業医・伝え方コーチ:本間季里

「社員一人ひとりが健康的に働き、会社が成長していける職場を目指したい」という理念のもと、心身の健康を支える産業医です。

少人数の職場では、産業医のサポートによる健康管理や職場環境の改善が会社の成長に直結します。そこで、従業員50人未満の会社の産業医業務に特に力を入れています。

私の産業医としての強みは、傾聴、質問、わかりやすいアドバイス、的確な判断の4つのアプローチを組み合わせ、経営者と社員の支援を行っています。10年以上の経験を持ち、日立製作所、長崎大学など、幅広い業種で産業医を務めてきました。

企業規模に関わらず、経営者が経営に専念でき、社員が心身ともに健康で働ける職場の実現を目指します。

資格:日本医師会認定産業医・医学博士
アサーティブジャパン会員トレーナー
コーチングプラットフォーム認定コーチ
Gallup社認定ストレングス・コーチ

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