運動とレジリエンスー運動部出身者はストレス耐性が高い?

会社の採用担当の人からしばしば聞く言葉。

「やっぱり学生時代、運動部で頑張りました、っていう人はストレス耐性があっていいよね〜」

私は運動とは無縁の人間なので、その言葉を聞くたびに肩身が狭い!

あなたはどうですか?

産業医・伝え方コーチの本間季里です。

「ストレス耐性があっていいよね〜」の真意はなにか?

私はこういう性格だし、伝え方コーチを名乗っているので、こういう「わかったようなわからないような」状態のまま終わらせたりしない。

「ストレス耐性って、例えばどういうこと?」と聞ければ聞くようにしている。

何回か聞いてわかったことなんだけれど、彼らが思い浮かべるのはおおよそこんなことみたいだ。

1)体力がある。

2)行動が早い。

3)我慢強い。

4)上下関係をきっちり守る。

5)多少理不尽な目にあっても文句を言わない。

彼らが言いたいことはわかる。

気力を支えるのは体力

「気力を支えるのは体力」これは私のクライアントさんが言った言葉だけれど、その瞬間膝を打つくらい「言い得て妙」と思った。その通り。

やっぱり、部活やサークルなどで欠かさず運動をしていれば体力はつく。まして今は昔に比べて、科学的にも正しい効率良いトレーニングをしていたりする。

体力がれば気力もあるから、ここ一番というときに頑張りもきくでしょう。

行動が早い

行動が早いというのも頷ける気がします。

体力があるから?

そう、それもありますね。でも、それ以外にも理由はあるように思います。

例えば、記録を伸ばすために他の選手のやり方を学ぶ。

うまくいっている人に話を聴く。

壁にあたったとき、壁を突破する自分なりの方法を身に着けている。

そして得た情報は速やかに実践してみて、自分にあっているかどうか確かめる。

こうやってPDCAを回しながら、周囲の助言も得ながら成長するプロセスを経験しているから、いくつも自分なりのカードを持っている。その可能性は高い気がします。

我慢強い(レジリエンスが高い)

これはどうでしょう?実はこれはホルモンの視点からやはり説明がつくんですよね。

運動というのは人間にとってはストレス。安穏とした状態ではないからね。

心拍数は上がるし、筋肉は緊張と弛緩を短い間隔で繰り返すわけだし。

これを人はストレスとしてキャッチします。すると、副腎からステロイドホルモンが急激に分泌されます。

運動が終わると急速にステロイドホルモンは低下する。

で、ここからが大事なんだけれど、運動を定期的に行うと、だんだん運動をストレスと感じなくなってくるんですね。だから血液中のステロイドホルモン濃度の上昇速度、下降速度が緩やかになってくるんです。

ステロイドホルモンは感情の動きにも影響を及ぼすので、気持ちが安定しやすくなっていくんですね。

それが外からみたときに「我慢強い」「レジリエンスが高い」と見えるのかもしれません。

他の2つは??

残りの2つはどうでしょう?たしかに印象としては正しいような気もしますね。

でも、上下関係に敏感な運動と無縁の人もたくさんいそう。

「多少理不尽な目にあっても文句を言わない」ひとも統計処理をすれば有意差は出るかもしれない。

でも、これら2つは決して美徳ではないでしょう。はっきり言うと「会社にとって都合がいい人」ということではないでしょうか?

一歩間違えば、先輩の言うことはやばいことでも追認する。

組織のコンプラ違反があっても飲み込むということになりかねません。

ハラスメントを受けても「なんのこれしき!昔の練習のキツさを思えば」などと、間違った正当化が起きてしまうかも。

「やっぱり学生時代、運動部で頑張りました、っていう人はストレス耐性があっていいよね〜」は正しいか?

そう考えていくと、体力があることのメリットはありますね。

それから、一人でじっと内省して考え込むと言うより、周囲のいろいろな人に早い段階で聞いて情報収集をする習慣があるとすれば、それはわからないときに「周囲の誰に相談したら良いのか」を考え、早めにアクセスして問題解決を図る、という点では確かにプラスになりそうです。

では、運動部で頑張ったかどうかは、運動をしてこなかった人にとっては挽回不能なのか?という点はどうでしょう?

いま、運動が好き・嫌い、得意・不得意にかかわらず、健康のため、自己管理の一環として、定期的に運動をしている人が増えています。彼らは社会に出てからかもしれませんが、運動を継続することで体力はありますね。

また、相談する・しないは、必要に迫られて身につけていく人も多いように見受けられます。決して挽回不可能ということはないと思うんだけれどなぁ。

わたしの結論

自己弁護というわけでもないんですが、運動部出身かどうかはレジリエンスに差はないだろうというのが私の結論。

もちろん、入社したては差があるように見えるかもしれない。しかし、社会に出てから成長するからなあ。

ちなみに手前味噌だが、私もここ10年みたって相当成長している。成長に年は関係ないし!

この記事を書いた人

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本間 季里

少人数の会社でも産業医が必要な理由
産業医・伝え方コーチ:本間季里

「社員一人ひとりが健康的に働き、会社が成長していける職場を目指したい」という理念のもと、心身の健康を支える産業医です。

少人数の職場では、産業医のサポートによる健康管理や職場環境の改善が会社の成長に直結します。そこで、従業員50人未満の会社の産業医業務に特に力を入れています。

私の産業医としての強みは、傾聴、質問、わかりやすいアドバイス、的確な判断の4つのアプローチを組み合わせ、経営者と社員の支援を行っています。10年以上の経験を持ち、日立製作所、長崎大学など、幅広い業種で産業医を務めてきました。

企業規模に関わらず、経営者が経営に専念でき、社員が心身ともに健康で働ける職場の実現を目指します。

資格:日本医師会認定産業医・医学博士
アサーティブジャパン会員トレーナー
コーチングプラットフォーム認定コーチ
Gallup社認定ストレングス・コーチ

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